「尿素水」品薄 運送業者から物流への影響を懸念する声

経済産業省などによりますと、「尿素水」はトラックなど大型のディーゼル車の排ガスを浄化する装置などで、有害物質の排出を抑えるために広く使用され、浄化装置が搭載された車両の多くは「尿素水」がないとエンジンがかけられない仕様になっているということです。

国内では原料となる尿素のおよそ半分を輸入でまかなっていますが、その多くを占める中国が今年10月から輸出前の検査を厳格化したため、入荷できない状況が続いているということです。このため「尿素水」が品薄となり、一部の運送業者などは入手しにくい状況になっていて物流への影響を懸念する声も出ています。また、ネット上では「尿素水」が通常の10倍前後の高値で転売されるケースも相次ぎ、フリマアプリ大手の「メルカリ」は21日、利用者に冷静な行動を取るようホームページで呼びかけました。経済産業省は、こうした状況を受けて、国内で尿素を生産しているメーカー各社に最大限の増産を呼びかけているということで、早ければ来月中には品薄は改善に向かう見通しだとしています。

尿素の輸入商社「早く安定して輸入できる状況に戻ってほしい」

尿素を中国から輸入している商社からは戸惑いの声が上がっています。東京 千代田区の貿易商社は中国から年間およそ1000トンの尿素を輸入し、国内の尿素水のメーカーに販売しているということです。尿素の価格は夏ごろから上昇し、中国の国内で輸出前の検査が厳格化された影響で、この会社では11月から全く輸入できない状況が続いているということです。貿易商社オリエンタルトレーディングの山本恵司代表は「今も尿素は輸入できていません。現地のメーカーからは輸出する尿素を検査には出すことはできたが、許可が下りるまでには30日から50日はかかるだろうと言われている。今後どうなるか見通せず、早く安定して輸入できる状況に戻ってほしい」と話していました。

運送業者からは今後の影響 懸念する声も

「尿素水」が品薄になっている状況について一部の運送業者からは、今後の影響を懸念する声が出ています。東京都トラック協会足立支部によりますと、支部には先月以降「尿素水を入手できないので協会を通じて購入できないか」などの問い合わせが10件程度寄せられているということです。中には在庫があと1か月分しかなく、新たに購入できないと来月以降はトラックを動かせないと訴える会社もあるということです。東京都トラック協会足立支部の鳥ノ海学副支部長は「車両台数の少ない中小企業はふだんの仕入れ先から入手できない状況で、ほかの仕入れ先から新規に購入することも難しく、よけいに手に入りづらくなっている。ライフラインを担う物流は止められないので、必死に『尿素水』を確保している状況だ」と話しています。

専門家「落ち着いて冷静に購入を」

インターネットを使ったビジネスに詳しい国際大学の山口真一准教授は「供給が少なくなり価格が上がることは正常な市場原理であり、個人間の売買を過剰に規制することは慎重にするべきだ」としたうえで、「今後、著しく物流が立ち行かなくなったり、高額になりすぎて誰も取り引きに応じられず、さらに供給が減る悪循環になっていった場合は、サイトの運営側が官公庁と連携しながら自主的に介入することが望ましい」と話していました。また、「不安感からパニックになって買い占めに走ると、さらに市場が混乱してしまうため、落ち着いて冷静に購入することも必要だ」と指摘しています。

「尿素水」品薄 運送業者から物流への影響を懸念する声