世界には9000種以上の未知の樹木がある…そのほとんどが絶滅の危機に
ペルーの南アマゾン地域、マドレ・デ・ディオス州にあるマヌー生物圏保護区で、キャノピーから鳥を観察する観光客。2009年11月2日撮影。
世界の森林を対象とした大規模な調査により、9200種の未知の樹木が存在することが推定された。【全画像をみる】世界には9000種以上の未知の樹木がある…そのほとんどが絶滅の危機にこれらの謎の樹木の多くは希少なものである可能性が高く、中には分類される前に絶滅してしまうものもあるという。南米には、未知の樹種の約40%が存在すると考えられており、そのほとんどがアマゾンの熱帯雨林に存在するとされている。森林には、科学者がまだ発見していない約9200種の樹木が隠されていることが、新たな研究により推定された。世界中の100人以上の科学者が、これまでで最大となる地球規模の森林データベースを構築し、未発見の樹木の種類がどれくらいあるのかを科学的な裏付けに基づき推定した研究論文が2022年1月31日、米国科学アカデミー紀要に掲載された。この論文によると、約9200種の樹木の多くは、限られた領域にわずかに生育するだけで、極めて希少なものであるため、科学的には未発見だと考えられている。そのため、これらの樹木は気候変動に対して特に脆弱だと言える。パデュー大学の森林生態学者で、今回の論文の共同執筆者であるジンジン・リャン(Jingjing Liang)は、「未発見の樹木種を発見する前に絶滅させてしまう可能性が非常に高い」とプレスリリースで述べている。
樹木に関する最大規模のデータベースを構築
世界最大の樹木データベースを作成するために、研究者は2つの世界的な樹木調査のデータを組み合わせた。1つは「Global Forest Biodiversity Initiative」、もう1つは世界中の樹木数を計測する独自の取り組み「TREECHANGE」の調査からのデータだ。これらの調査では、90の国と100の地域にわたる3800万本以上の樹木が計測された。Global Forest Biodiversity Initiativeのコーディネーターも務めるリャンは「それぞれのデータは、調査員が森林に行き、樹木を1本ずつ計測し、種類や大きさ、その他の特徴などについて収集した情報で構成されている。世界中の樹木の種類を数えるのは、世界中に散らばっているパズルを解くようなものだ」と言う。これらの2つの樹木調査を組み合わせたことで、6万4100種の樹木についてのデータが得られた。しかし、あらゆる種類の植物、動物、菌類、昆虫、細菌と同様に、地球上のすべての樹木種が発見されたわけではないことを科学者は理解している。そこでリャンの研究チームは、この広範囲にわたる新たなデータセットを用いて、それぞれの大陸のさまざまな種類の森林における樹木種の多様性について計算した。また、現地調査で1、2回しか発見されなかった希少種の出現状況も分析した。これらの傾向を分析し、モデル化することで、地球上には7万3300種の樹木が存在することが判明した。これは、現在リスト化されている種の数よりも14%多い。パデュー大学森林経済・管理学部准教授で今回の論文のデータ分析に貢献したモ・チョウ(Mo Zhou)は「世界中の樹木の種を正確に推定することは、すばらしい知見になる」とプレスリリースで述べている。「将来何が起ころうとも、我々の子どもやその子どもたちは、21世紀の初めには地球上におよそ7万種の樹木が存在していたと知ることになる」