その大麻の価値(と代償)、知ってますか? 半グレも心を痛める現実

日本国内で若年層を中心に大麻取締法違反の逮捕者が増加している。違法である以上、反社会的勢力の資金源であることも問題視される大麻だが、具体的にその価値はどれほどのものなのか?

今回は主に大麻栽培にかかるコストに目を向け、政府の掲げる「ダメ。ゼッタイ。」とは別の視点から、その問題と現実を掘り下げる──。

目次

アメリカで大麻ビジネスは、すでに“淘汰”の段階

前回、全土での合法化が目前に見えるアメリカで、大麻ビジネスがどう展開されているかについて解説した。

最初に覚えるのは「銃の扱い」 大麻ショップの“抜き差しならない”事情

大麻に関する現在的状況をリポートする第2弾。大麻取締法の「使用罪創設」が進む中、“愛好家”及びその周辺では…

カルチベーション(栽培)、マニュファクチャリング(加工)、リサーチ(検査)、ディスペンサリー(販売)、ロジスティクス(物流)の5つに大別される(いずれも別種の免許がいる)それぞれは、およそ何を行なっているかについてだ。

また、アメリカでの大麻の正規料金(正規のディスペンサリーだと1gで1500円程度、非正規のディスペンサリーだと1gで900円程度)を紹介し、日本の末端価格との具体的な差についても触れた(日本でのある逮捕報道では、1g8000円で売られていた)。

薬物の蔓延が社会問題化するのは人体への影響の他、それがいわゆる反社会的勢力の資金源となるからだろう。

輸入にかかる経費が商品代金に計上されるのは違法薬物に限った話ではないが、大麻に関して言えば「現実には国内で栽培されたものもインポート(輸入物)として売買されている」(新宿の半グレX氏)。

 その大麻の価値(と代償)、知ってますか? 半グレも心を痛める現実

インポートと謳えば、より高値で売ることができる(国産より質が高く、輸入コストがかかっていると考えれば顧客も納得する)からだ。

X氏が前述した言葉は、単に価格を上げるための「偽装」ともとれるが、既に日本でも輸入物と同等のクオリティーのマリファナが栽培されているという意味も含んでいる。

ワールドスタンダードにおける大麻の合法化、日本の厳罰化、どちらに正当性があるかはさておき、日本では非合法ゆえに情報がブラックボックスに格納されてしまい、そもそも一般的なマリファナの価格の目安すらない(そうした情報にアクセスできない)。

今回カルチベーション(栽培)の内実について紹介するのは、大麻の価値について具体的なイメージを持っていれば、高いリスクを冒してまで安易に手を出すことへの抑止になると考えたからだ。

世界的には合法化の流れがある大麻について、「ダメ。ゼッタイ。」という政治的な標語だけで乱用を防止するのはもはや無理があるのではないか。合法非合法を問わず、大麻だろうが羽毛布団だろうが、不当に金を払って良いことは何もない。

「アメリカでは既にマリファナビジネスの淘汰が始まっています」とは、前回アメリカの大麻ビジネスの実情を具体的に教えてくれたカリフォルニア州のディスペンサリー経営者ベンさんの言だ。

「育てている人間も売っている人間も多すぎる。特にカリフォルニアに関してはマリファナが過剰だし、新規参入は難しい。マリファナで稼ぎたいと思うなら、他のエリア(州)が空くたびに狙っていくしかない。全土で合法化すれば、国の産業として海外に目を向けるのは自然な流れだと思う」(ベンさん)

連邦法の改正以前に、カリフォルニアの大麻ビジネスにはもう新規参入の余地がない。わずか数年前には500万円を元手に始められたのが、今やスタートアップに3億円かかるというのがカリフォルニアの現状だそうだ。そのため、海外市場への期待が高まっているという。

そう考えると、日本での大麻取締法違反の摘発増加も、こうした世界の大麻合法化の流れのひとつの余波かもしれない。

前出のX氏は裏社会に片足を突っ込みながら、若年層の大麻取締法違反による逮捕者増加については「胸が痛い部分もある」という思いを吐露していた。

「大麻を吸っているからかっこいいとかその程度の軽い気持ちで、リスクの計算をできずに手を出し、あげく逮捕されてしまう。16歳で少年院に行くことにでもなれば、その烙印でかなり人生の痛手を被るのが日本社会の現状ですよね。

一般企業には入れない、賃貸ひとつとっても大変とか。不良でもない若者が大麻で人生を狂わせているのを見ると、やっぱりちょっと切ないというか考えさせられますよ」(X氏)

日本の半グレが語る、大麻の栽培

ここからは具体的に大麻栽培の内実に踏み込んでいきたい。