悠木碧、トプスは『子供より大人に刺さるキャラなのかな?』お気に入りは石塚運昇さん“おじいちゃん”のシーン【Interview】

悠木碧が映画「さよなら、ティラノ」への思いを明かす

 悠木碧、トプスは『子供より大人に刺さるキャラなのかな?』お気に入りは石塚運昇さん“おじいちゃん”のシーン【Interview】

シリーズ累計200万部を超える宮西達也原作の絵本“ティラノサウルスシリーズ”「ずっとずっといっしょだよ」(ポプラ社刊)ほかを原作にした映画「さよなら、ティラノ」が、12月10日(金)より全国で公開される。WEBザテレビジョンでは、本作で甘えん坊のトリケラトプスの子供・トプス役を務める悠木碧にインタビュー。2度の公開延期を経ての上映となる本作やトプスへの思い、またトプスのおじいちゃんを演じる石塚運昇さんとの思い出を語ってもらった。【写真を見る】大人っぽい雰囲気が漂う悠木碧本作は手塚プロダクション制作、「劇場版名探偵コナン」シリーズを手掛けてきた静野孔文氏が監督、「王立宇宙軍 オネアミスの翼」以来33年ぶりのアニメーション映画となる坂本龍一が音楽を担当する。ある日、地上最強の肉食恐竜なのに獲物を狩ろうとせず、暗闇を怖がるティラノサウルスのティラノ(三木眞一郎)は、翼が付いた恐竜なのに空を飛べないプテラノドンの少女・プノン(石原夏織)と出会う。そんな2匹が母親とはぐれたトプス(悠木)の案内で、地上唯一の楽園と呼ばれる“天国”を目指して旅をする姿が描かれる。■愛くるしいトプスと悠木碧の共通点は?――新型コロナウイルス感染症の影響などもあり、満を持しての公開となります。今のお気持ちを教えてください。コロナ禍になるよりもっともっと前に収録をしていたんですけれど、「一番良い形で皆さんの元に届くように」ということで、一番届けたい人たちに届く時期まで、この子たちは機会を見ていたんだなと思っています。ただ、いつ見ていただいても見ていただいた方の心に間違いなく届く作品だということは分かっていたので、公開を楽しみにしていました。――本作を初めて読んだ時の印象はいかがでしたか?タイトルですでに「さよなら、ティラノ」って言ってるじゃん! と思いながら読み進めて、さよならを迎えるという…その流れがエモいけれど、切なかったです。“その時”が来ると思って構えて読むと、「なんでこの人がさよならをすることになるのか」という結果を見つけようと思って読むんです。それがしっかりと描かれているので、湧き上がってくるものがありました。――台本を読んでグッときてしまうことって結構あるんですか?そうですね。やっぱり誰かが命を懸ける理由がある作品には心が動いてしまいます。今回トプスは守られる側ですが、私自身、演じるキャラクターが命がけで戦うことも多かったりして。でも、命を懸けられるほど大事なものがあるというのは、怖いことでもあるけれど、ある種、幸福なことでもあるんだなというのは今まで命を懸けてきた子たちを見て思います。――今回演じたトプスの印象や演じるうえで意識されたことがありましたら教えてください。プノンは自分の為にも頑張れる子なんですけれど、どちらかというと誰かのために頑張れるタイプの女の子だと思うんです。その中で冒頭のトプスはただ愛くるしくて、何にもできなくて、プノンが「守ってあげなきゃ!」と焚きつけられる物語としての歯車だったんです。そんなトプスがプノンやティラノの勇気を見て、友情を覚えて、「自分も何かしたい!守ってあげなきゃ!」と成長していく…なので、現実を見た時のトプスと大事な思い出を思い返している時のトプスで、赤ちゃんが子供になるような成長が表現できたら物語の邪魔にならずに彼のストーリーも描けるのかなって思いました。この作品ってすごく特殊だなと感じたのが、年齢や性別などが関係なく、お友達として描かれるんです。(トプスの)おじいちゃんたちもいるので、そこでのトプスは赤ちゃんで、小さくて、かわいくて、守ってあげなきゃいけない存在なんですけれど、それでも対等に扱われていて…もしかしたら動物の世界ってこうなのかもって思いました。――そんなトプスと悠木さんの共通点はありますか?皆さんも共感してくれるところがちょっとあるかな? と思うんですけれど、やりたいことと自分のスキルの差が激しいことですね(笑)。それこそトプスは(物語の中で)自我が芽生えて、「これもやりたい!あれもやりたい!」って思うけれど、体のサイズが変わっていないので、「何にもできないじゃん…」って…この感じって、きっと人生で一度はみんなが味わったことがあるんじゃないかなって、私は大人になってからも味わったことがあるので、トプスはどちらかというと子供より大人に刺さるキャラなのかな? と思いました。いろいろなことを背負っている我々にトプスが「そういうの大変だよね」って言ってくれているような気がしています。■「オールラウンダーで頑張っていこうと思っています」――悠木さんが演じるトプスが本当に愛くるしかったのですが、あの声はすぐに決まったのでしょうか?確かもっと少年に作っていったんじゃなかったかな?…と。収録したのがだいぶ前なので記憶があいまいなんですけれど、「もっとかわいくしてほしい」と言われた気がします。実はオーディションはプノンを受けていたのですが、「トプスで」と言っていただいたので、そこから自分ができるトプスのパーツは何かな? と探していきました。あざといくらいかわいくていいのか、天然な生き物としてかわいいのか、絵がとてもかわいいのでやり過ぎた方がいいのか、やり過ぎない方がいいのか…シーンによっても違ったので、チューニングが難しいなと思いました。――トプスの成長を描くうえで変えた部分はありましたか?台本自体が(前半と後半で)とても変わっていて、最初のトプスは「ぽわぽわでね~」や「お母さんがね~」って、本当に1歳か2歳の赤ちゃんみたいだったんですけれど、友達が増えたことで会話をするようになって、「お姉ちゃん、大変だよ!」って言うようになったり、ハキハキ喋るようになって、語彙が増えていったんです。トプスは何を見せたいのかがとても明確なキャラクターだったので、台本通りに演じられればちゃんと成長するようによくお話が練られていたと思います。――トプスのセリフではない部分もとてもかわいかったです! あのような表現はお得意なんですか?ありがとうございます…! セリフで説明してくれている時は、ちょっと引き算した方が言葉の意味が伝わったりする時があるんですけれど、トプスのように言葉が足りない状態の時はちょっと盛ってあげないと何を考えているか分からないんですよね。例えば最初の方でトプスがお腹が減っちゃって“ぺちょ”ってなる場面でも「ふに」って入れてみたり(笑)。――…! あれって悠木さんのアドリブなんですか!?(トプスの)小さい動きについているのはだいたいアドリブでつけています。「…」とかは台本上にあったりするんですけれど、細かくついているものはアドリブで入れていました。トプスの動きもコミカルだったので、(細かく)入っていた方が子供たちが見てくれた時に楽しいかな? と思って、ちょっと味をつけてみました。ただ、得意かと言われると…でも、動きに合わせていろいろなものを入れていくのは楽しかったです。得意でいうと何なんだろう? 最近よく言われるのは早口なもの…あと、業界に来た当初は泣きの芝居があるものがオーディションでは受かりやすかったんですけれど、最近はどっこいの打率ですね(笑)。でも、不思議だな、うれしいなと思うのが、ファンの皆さんに「悠木碧と言えばどの役ですか?」と聞いた時に、全然違う答えが返ってくるんです。声優さんって声自体に特徴があると、「これと言えばこの人!」というようなことがあるんですけれど、私はいろんな役、いろんな色で挙げていただいて、オールラウンダーで頑張っていこうと思っています。■悠木碧にとっての“天国”は?――悠木さんは本作のトプスたちのように仕事を通じて誰かに助けてもらったというエピソードはありますか?助けられっぱなしです…! 今回の作品もですが、レジェンド級の皆さんと一緒にマイク前に立たせていただくと、この人たちと対等にマイク前に立って芝居がしたいけれど、やっぱり背伸びをしても足りない部分があるんだなというのを感じます。でも、一緒にお芝居をさせてもらうことで底上げしてもらえる部分もあるんです。出来上がった作品を見た時、スタジオで感じていた無力感よりもずっとずっと良くなっていて、それは間違いなく声を聞きながら一緒に録らせていただいたからだなと思うんです。それは役者さんだけではなくて、音を録ってくださっている音響監督さんやスタッフさんたちが、「ここは良く聞こえるように」というタイミングで音を入れてくださっていることもあって…作品って助け合いでよりよく作られているんだなと思うことは多いです。逆にそこで私が思っていた状態が出せていたら、さらに良かったのかなと思うので、常に全力投球することで、プラスアルファ分が伸びていくようになったらいいなと思っています。――後輩の方からも刺激を受けているなと感じることはありますか?めちゃくちゃあります。後輩が出来ないと先輩になれないというのは、すごいなと思っていて、私は今まで「先輩!先輩!」って先輩の背中を追いかけるばかりでしたけれど、後輩ができたことによって「あっ、こういうふうに先輩たちは思ってくれていて、あの言葉を言ってくれていたんだな」とたくさん気づけました。私も先輩たちの芝居を見て子供から大人に成長してきていますが、私たちや私より先輩の芝居を見て育ってきている子たちが業界に入ってきているということは、よりどんどん更新されているということじゃないですか! それは「すごいなぁ」と思いますし、後輩の芝居を見るとやっぱりワクワクします。――悠木さんは今回トプスを演じられていますが、その他にお気に入りのキャラクターはいますか?私、ルクト様(CV:井上喜久子)好きなんです! ルクト様にはルクト様の信念があって、苦しんできた歴史や、守ってきたものがあるから受け入れられない…というところから、確変的なことが起きて、協力しなきゃいけないとなった時の判断の早さが「この人はただ嫌で言っていたわけではなくて、自分の種族を本気で守らなきゃ」と思っていたからなんだなって。これはこれで正義というのがとても好きで、ルクト様はなりたい強い女性像でもありますし、頭脳で生き残っている姿もかっこよくて好きでした。あと、ティラノはみんな大好きですよね! 冒頭ではちょっと寡黙で、無愛想なティラノが、ちまちましたかわいいものにほだされていく様子が、だんだんかわいく見えてくるというこの作りはすごくいいなと思います。大人にもかわいいところがいっぱいありますし、“大人も変化する”ということの象徴でもあると思うんです。性別も年齢も超えた友情を描くのにティラノは絶対に必要ですし、だからこそ彼の選択が泣けるんです…。物語の途中では、トプスが赤い実を食べている時によだれが垂れちゃうというかわいい描写もあって、「監督は実はティラノが一番かわいいと思って描いているでしょ?」って思っています(笑)。――物語の中でトプスたちは“天国”を目指して旅をしますが、悠木さんにとっての「これがあれば天国!」というものを教えてください。ふかふかのお布団! ネットゲームをやるので、私の部屋ってたくさんパソコンが並んでいるんですけれど、ふかふかなお布団が大好き過ぎて、パソコンと昇降式デスクの間にベッドをぶち込んでいるんです(笑)。ベッドでゲームをするし、ベッドで絵を描くし、ベッドでそのまま寝るので、ふかふかのお布団から出たくない人の作りで生きています。なので、私の天国はすごく近いところにあるんです!――今回の収録はティラノ役の三木さん、プノン役の石原さんと一緒にされたようですが、何か印象に残っていることはありますか?実はトプスって、キャラクターたちの裏で動いていたので、一緒の空間にはいたんですけれど、ほぼ掛け合ってないんです(笑)。ただ私は、元々三木さんのお芝居がとても大好きで、高校時代にハマっていたキャラクターのCVを三木さんが担当されていたんです。そのキャラクターも(ティラノと一緒で)他のキャラクターよりちょっと大人で、責任感のある役で、そのキャラクターも非業の死を遂げてさよならしてしまうんですけれど…、「散る瞬間ってこんなにも命が輝くんだな」というのを教えていただいた方でもあるので、今回、三木さんの生のお芝居を見せていただけたのは本当にうれしかったです。夏織ちゃんはいっぱい喋って、(物語の中で)みんなを引っ張らなくちゃいけないから大変そうでした。でも、トプスの私にできることは何もなく(笑)、「大変だね…お疲れ様!」「がんばやで!お弁当一緒に食べるか?」という感じでしたね。■「運昇さんの声がまだ劇場で響く」――悠木さんお気に入りのシーンはありますか?トプスのおじいちゃんを石塚運昇さんが演じられているんですけれど、今も残る肉声にグッときてしまって、「おじいちゃん…!」ってなりました。おじいちゃんが登場する最初のシーンって、わざと怖く出てきたような感じがするんですけれど、トプスが困ると、絶対に助けにきてくれるのもすごくいいんですよね。(運昇さんには)いろいろな現場、長期の現場でもお世話になっていたので、運昇さんの声がまだ劇場で響くんだと思ったらそれがすごくうれしくて、きっと一生忘れないなって…忘れちゃ行けないなって思いました。皆さんにもぜひ、劇場で聞いていただきたいなって思います。――悠木さんの中で記憶に残っている石塚さんとの思い出や、ファンの方に伝えたい石塚さんのエピソードはありますか?別の作品で毎週運昇さんと一緒ですという現場がありがたいことにあったんですけれど、その時も(運昇さんは)レジェンドの中でもレジェンドなのに、あまりにもご本人がフランクだから、“いじられポジション”なんです(笑)。でも、それを飄々と交わすでもなく、受けつつ…こんな言い方失礼かもしれないんですけれど、人として愛おしさもありつつ、尊敬もできて、かっこいいなって思っていました。レジェンドの人って愛される振る舞いをされるんだなって、運昇さんとの関わりの中で思いました。ただ、私は元気な時にお会いしていましたし、突然会えなくなっちゃうなんて思っていなかったので、もっとお話しておけばよかったなって思います。「さよなら、ティラノ」はすごく久しぶりに一緒だったので、関係性の深いキャラクターでご一緒できたのはすごくうれしかったです。一緒に録りたかったなぁ…!――ありがとうございます…!最後に公開を楽しみにしているファンの方々にメッセージをお願いします。王道かつ硬派に作られた作品なので、まず外さない、まず刺さる…劇場で見ることにすごく意味のある作品だと思います。誰かと映画館に行く時、気まずくならない作品であることって重要だと思うんですけれど(笑)、音も絵も、お話も、誰と見に行っても気まずくならないですし、一人で見ていただいても、その時思い浮かぶ人の顔があるんじゃないかなと思うような丁寧に作られた作品でもあります。ぜひ劇場でご覧いただけたらうれしいなと思います。