ロサンゼルスの貯水湖に96,000,000個の黒いボール。なんで?
蒸発防止が主目的じゃなかったのね…。
ロサンゼルスの貯水湖を覆う9600万個の黒いボール。蒸発防止用と思いきや、実はもっとヤバいものを封じるために投入されたものでした…。
初めてロサンゼルス水道局のボートに同行取材したYouTuberのDerek MullerさんがYouTubeチャンネルVeritasiumで紹介し、再生数は3000万回近くを記録しています。
ネクタイ姿の水道局COOによると、LAは中洲の塩水に臭化物がまぎれ込んでいて、除去するのはほぼ不可能なんだとか。「それ自体は無害」と何度も繰り返してるように、それ自体は無害です。ただ、除菌のオゾン処理で酸化すると、発がん性物質の臭素酸になっちゃうので、浄水場では基準値レベルに収まるよう管理に気をつけているんですね。
ところが、「基準値以上混入してるぞ!」と飲料メーカーから苦情が入り、浄化後の水をためておく池を調べてみたら、ここに流れ込んだ途端、臭素酸がわっと増えていることが判明(動画では値が10倍になっている)。そうか、臭化物が消毒用の塩素と合わさって日光を浴びると発がん性物質の臭素酸になるんだ!とわかって、日除けが大至急必要になったのであります。
でもシェードは数年がかりの工事になってしまうし、トランポリンは鳥の糞がたまるし、黒の丸太は原料コストが嵩むので×、砕いて浮かべるのも飲み水が不安。けっきょく、空港の貯水池のバードボール(鳥よけ玉)がピッタリとわかり、100万個近く作らせてトラックでコロコロコロコロ~と投入したのですね。
導入にあたっては、子ども用プールに貯水池の水を貯めて、シェード、むき出し、黒ボールの3つであらかじめ効果を試してみたんですけど、黒いボールを浮かべるだけで発がん性物質は完璧にシャットアウトできたんだそうですよ? サイエンスですね~。
なんで黒いの?
黒いのは、日除け効果が最大だからです。耐久性も◎で、ほかのカラーは1年しかもたないのに、直射日光の下でも10年以上もつらしい…。食品用の素材だから体にも安心だし(COOは玉を噛んでも大丈夫とパフォーマンスしてる)、この玉を浮かべてから緑の藻がわくこともなくなり、藻を抑える塩素の投入量も減りました。よいことづくめ!
いちおうボールは軽すぎると、風で飛んでいって付近の高速道が玉だらけになってしまうので、水を少し入れて重みをもたせています。どうりでボートが遅いわけだ…。
見渡す限りのキャビア、タピオカ状態の湖面には風も吹かず、波も起こりません。「ピーナッツバターを航行するような重さですか?」と聞かれて、ひげの職員さんは「まあね。やったことないけど」と笑ってますよ。
「黒だと熱を吸収して蒸発が増えるんじゃないの?」と思っちゃいますけど、ボールの下はひんやりしたままだし、ボールに詰まった空気が断熱材になってくれるので、水温はこっちのほうが低いんだそうですよ? 風が吹かないので、それも蒸発減らしに役立っており、それやこれやで蒸発量は80~90%も削減されました。
コストも安い
気になるコストは1個33~34セント。消毒用の塩素と蒸発が減った分で、コストの半分は回収できます。これで発がん性物質が消えるんだから安いもんですよね。
あ、「うちの貯水池はこんな黒い玉、浮かんでない!」と急に不安になっちゃいますけど、塩水が混じるのはロサンゼルスの地形的な特徴なので、よその市町村のため池は特に心配ないようです。