PFNと鹿島開発の自律型清掃ロボット、建築現場へ。ディープラーニングで周辺環境を認識

AI清掃ロボット「raccoon」と自律移動システム「iNoh」

AI清掃ロボット「raccoon」(ラクーン)

まず、AI清掃ロボット「raccoon」(ラクーン)について。「raccoon」は本体の操作画面から最短3タッチの指示で、自律移動しながら、コンクリート床面にあるゴミや粉塵を清掃するロボット。

本体の大きさは長さ1,205mm、幅776mm、高さ816mm。重さは約80kgで、見た目よりも軽い。ベースは既製の手押し掃除機で、それに車輪やモーター、制御部をつけた。底面にゴミを回収するためのバケツがあり、容量は37リットル。一般的な扉枠のサイズである900mmの枠内に収まるようになっており、清掃機としては標準的な大きさだという。

「raccoon」正面側面後面。灰色部分がバケツracoonの下面。既製の掃除機を改造した

バッテリは定格容量9.3Ah(413Wh)のリチウムイオン電池を2台並列で使っている。連続稼働時間は400W想定で約120分。500Wのフル稼働で約100分。充電時間は約1時間(バッテリ残量10%を80%にする時間)。10mm以上の段差を検知し、12mmまでの段差ならば自走で乗り越えることができる。

おもなセンサー類は前方にLivoxの3D LiDAR(レーザーセンサー)、魚眼レンズカメラ、両脇に足元を見るためのIntel Realsense、正面に北陽の2D LiDAR。

PFNと鹿島開発の自律型清掃ロボット、建築現場へ。ディープラーニングで周辺環境を認識

これに加えて物理的接触を検知するバンパーセンサーが前後、障害物を検知するための超音波センサーが前方3、後方1。そして段差検知用の赤外線センサーが5つグルっとつけられている。

IMU(慣性センサー)は3D LiDARの内蔵IMUを用いている。操作盤は本体上面に配置されており、スタート設定のほか、ジョイスティックを使って手動でも動かすことができる。

各種センサー類が並ぶ。まんなかが空いているのはテスト中のためLivox社の3D LiDAR操作盤にはジョイスティックがあり手動操作もできる

自律移動やディープラーニングのための処理は、ロボット内部に搭載された粉塵対応の産業用PCで行なっている。SLAM(同時に地図作成と自己位置推定を同時に行なう処理)処理はCPUで、ディープラーニング処理はGPUで行なっている。

今後最適化していく予定だが、現状のスペックは、CPUがCore i9-9900(8コア/16スレッド、3.1GHz、キャッシュ16MB)、GPUはGeForce GTX 1660 SUPER。ログはLTE経由で収集されている。

掃除方式はスイーパー方式で、底面と側面のブラシでゴミを取り込む。清掃幅は620mm。2つの清掃モードを搭載している。現場内の地図や作業員の指示がなくても、自ら清掃可能エリアを探索しながら自律清掃する「おまかせ清掃モード」と、清掃可能エリアの地図を自動作成後、連携する施工図面上から清掃領域の指定ができる「領域清掃モード」の2つだ。

マップなしでも動作できるが、運用時はまず事前マップをロボットを使って作成させ、2次元図面と位置合わせを行なう。

ロボットを動かすときにはどのフロアなのかを最初に指示し、それに合わせてロボットは事前マップを読み込む。動作中は事前マップを更新しながら動作する。

事前マップがなければマップを作りながら清掃を行なう。基本的には「どのフロアにいるか」という指示だけ出して、スイッチオンすれば掃除ができるというものを目指しているという。

清掃面積は2時間で200〜400平米とされている。なお「raccoon」を首都圏の複数現場に試験導入した結果では、100分の連続稼働で約500平米のエリアを清掃できたという。これにより両社は自律移動システム「iNoh」の実用性を確認したとしている。