『スパロボ30』寺田貴信氏&最上頌平氏インタビュー。今作は時間のない人も遊べる、“今”にあわせた作品に

10月28日発売予定のPS4/Nintendo Switch/PC(Steam)用ソフト『スーパーロボット大戦30』。そのシリーズプロデューサーである寺田貴信氏と『スーパーロボット大戦30』プロデューサーの最上頌平氏に、“東京ゲームショウ2021 オンライン”の場でお話を伺うことができました。貴重なお話をたくさんしていただけたので、その内容をしっかりとお伝えしていきたいと思います。

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「遊び方を今の時代に合わせる」ことがコンセプト

──『スーパーロボット大戦(以下、スパロボ)』シリーズは今年で30周年を迎えましたが、あらためて今のお気持ちと、記念作品となる『スパロボ30』のコンセプトについて教えてください。

寺田さん:もともと『スパロボ』は、スーパーファミコンソフトの『第4次』でシリーズが終わる予定でした。4年か5年くらいで終わることを想定していたのですが、結果的に30年。いろいろなハードで出ることになって、よく30年も続けられたと思っています。『スパロボ30』に関しては、いろいろな人のプレイスタイル、ライフスタイルに合わせて遊んでもらうというコンセプトですね。

──いろいろなライフスタイルというと、やはりスマートフォンで新しく入ってきた層なども想定されているということでしょうか?

寺田さん:どちらかと言えば、「遊び方を今の時代に合わせる」のがコンセプトです。たとえば、僕と同世代だと子育てなどで忙しくゲームを遊ぶ機会がなかなかない……でも、スマホアプリのゲームは遊んでおられる方もいる。それはなぜかというと、スマホは気軽に、かつ手軽にできるからです。

従来の『スパロボ』はシミュレーションゲームなので時間がかかるし、手間がかかる部分も多い。『スパロボ』でもスマホアプリを出してはいるのですが、家庭用ゲームとまったく同じというわけではないので、『スパロボ30』は遊び方を今の時代になるべく合わせるというのがコンセプトとなっています。

──いろいろなライフスタイルを想定されているということで、AUTOバトルなどのシステムもそうしたコンセプトから導入された要素なのでしょうか?

最上さん:それは『スパロボ』を遊ぶ人の向き合い方が人によって違う、というのがスタートにあります。『スパロボ』は、どうしても“腰を据えてじっくり遊ぶゲーム”というのが皆さんの認知だと思いますが、ライフスタイルの変化であったり、今は世の中にたくさんの楽しいコンテンツがあったり、ちょっと大変過ぎて最近は遊んでいない、と考えていらっしゃる方がいることは我々もわかっていました。なので、AUTOはそうした方々に「もう少し気持ちを楽にして遊んでもらえますよ」という想いもあって入れた機能だと思っていただけるとうれしいです。

──今の時代に合わせた機能なのですね。ちなみに、AUTOバトルはどれくらい細かく設定できますか。

寺田さん:ユニットの行動方針を攻撃型、通常型、防御型のいずれかに設定できますが、補助的なシステムなので、あえて細かく設定できるようにはしていません。基本的には弱い敵と戦う時など、戦略があまり必要とされないシチュエーションでの使用を想定しています。なので、強敵と戦う時はマニュアルの方がいいです。味方ユニットの位置取りにこだわったり、任意のタイミングで精神コマンドを使いたいユーザーさんはAUTOバトルを使わないのではないかと思っていますが、それでいいんです。AUTOバトルは使える時に使っていただければと。家庭用では初めて導入するシステムなので、賛否両論あるでしょうし、「ユニット行動をもっと細かく設定したい」など機能に関するご意見もあると思っています。

──今の時代に合わせるということですが、ボリュームに関してはどれくらいになるのでしょうか。

寺田さん:今回は“タクティカル・エリア・セレクト”というシステムを導入していて、キーミッションだけをクリアしていけば話は進みますし、それしかやらなければ早めに最後まで行けます。逆に「ほかのミッションも全部やっていくよ」という人にとってはボリュームも大きくなりますね。今回は人によってすぐ終わったという人もいれば、時間がかかったという人もいて、まちまちになると思いますよ。

キーミッションを含めて複数のミッションから1個を選択するというケースが多いので、「今日はストーリーを先へ進めずに、簡単なミッションを1個だけクリアしよう」という遊び方も可能です。従来の『スパロボ』の持ち味をいかしつつ、なるべくこまめに遊んでもらえるようにしている感じですね。

──“タクティカル・エリア・セレクト”はこれまでになく新しい試みなので、まだいまいちイメージをつかみ切れてない人もいると思います。シナリオ分岐があるのか。どのような形でイベントが変わるのかなど、具体的な仕組みについて教えてください。

寺田さん:1話を遊んでもらえればわかるのですが、宇宙ルートと地上ルートのいずれかかを選んでいただくことになります。また、ミッションを選び方によって登場する機体の順番が変わることもあります。さらに特定のミッションをクリアすることによって出てくるミッションもあります。

──そうなると、キーミッション以外にも相当なボリュームがありそうですね。

寺田さん:シリーズ最大というわけではないですが、ミッションの総数は多いですね。ただ、タクティカル・エリア・セレクトはユーザーさんの進め方によってシナリオに登場するキャラクターが変わりますから、ストーリーの整合性を図るのが結構大変なんです。過去に似たようなシステムを思いついたことはあるんですが、なかなか踏み切れませんでしたね。

──お話を聞いているだけで書くライターさんは大変そうですが、そうなると監修される寺田さんも大変なのでは?

寺田さん:タクティカル・エリア・セレクトはディレクターでもあるライター本人が発案したものなので、任せました。私もシナリオを書くことがあるんですが、このシステムでやれと言われたら、尻込みしますね(笑)。

『スパロボ30』寺田貴信氏&最上頌平氏インタビュー。今作は時間のない人も遊べる、“今”にあわせた作品に

初期の『スパロボ』のシナリオはTVアニメの2クール分とほぼ同じ長さの26話ぐらいというイメージだったんですが、参戦作品数の増加などによりどんどんボリュームが増えていって、今では50~60話ぐらいが妥当だという感じになっています。人によってはそれが長いというと思われるでしょうし、40話ぐらいにするとボリュームが足りないと言われるかも知れない。なので、早くも終われば長くも遊べるものをこちらで用意しようと思ったんです。キーミッションのストーリーは従来通りの密度がありますが、他のミッションのストーリーもすべてがそうだというわけではありません。

また、従来にあった“エーストーク”も入っていて、今回は“艦内ミッション”という「ドライストレーガー艦内で発生するミッション」があって、基本的には会話のみなのですが、そこそこの数が用意されています。なので、『スパロボ』をじっくり遊びたいユーザーさんには楽しんでいただけるかと思います。ただ、1周ですべてのミッションをコンプリートすることはできません。そこはシナリオ分岐が多めの過去の『スパロボ』と同じですね。

──今回は、そこに加えてDLCでも機体+ミッションが追加されるとなると相当なボリュームになりそうですね。

寺田さん:それを全部クリアするかどうかはユーザーさんのご判断次第です。全てのミッションをクリアする必要はありませんし、今回は人によってボリューム感がかなり違うと思います。なお、DLCで追加される機体とキャラクターはゲスト参戦という形になります。

──そうなると、DLCの機体と追加ミッションは『X‐Ω』や『DD』の期間限定参戦のような独立したシナリオになるのですか?

寺田さん:いえ、本編のストーリーに出て来ますが、がっつり絡むというわけではありません。全てのユーザーさんがDLCを購入されるわけではありませんし、本格的に本編ストーリーへ絡ませるとなると機体とキャラクターの数をしぼる必要があります。とはいえ、「ゲスト参戦なんてさびしい、原作のストーリーも組み込んでほしい」と仰るユーザーさんは多いと思いますので、悩んだところではあります。

海外需要にも答えたプレミアムサウンド&データパック

──“プレミアムサウンド&データパック”も、従来のプレミアムアニメソング&サウンドエディションとは違った新しい形のDLCですね。

最上さん:『T』までのプレミアムアニメソング&サウンドエディションのパッケージ版は、もともと日本でしか売っていない、国内限定という形の商品でした。デジタル版はあったのですが、海外のお客様から「ほしい!」という声が多く寄せられていたんです。

海外のイベントに行くと、自分が熱心なファンであることを示すために、自分では遊べない日本語の限定版パッケージを持っていることを我々にアピールしてくださるお客様もいて、需要があることはわかっていました。ただ、やはり『スパロボ』を販売しているすべての地域で、プレミアムサウンドエディションのパッケージ版を出すことは難しい面がありました。今回はDLCの形にすることでなんとか実現できそうだということがわかったので、この形を取っています。

──プレミアムアニメソング&サウンドエディションは期間限定ということで、ダウンロード版も販売が終了していましたが、プレミアムサウンド&データパックはDLCなので買える期間も長めなのでしょうか?

最上さん:今のところ、ほかのダウンロードコンテンツと同様に販売終了の期間は設けていません。あとから『スパロボ30』を遊ぼうと思った方も、プレミアムサウンド&データパックをプレイできる形になります。『T』までの場合は、期間限定なので一定の期間が過ぎると販売が終了してしまい、今から遊ぶにはパッケージ版をどこかから入手する必要がありました。本当はサウンドエディションを買いたかったけどもう買えない、というケースがあったのですが、この形にすることで防げると思います。

──海外需要に応える狙いもあったのですね。確かに、今は生配信を見ていても日本語の放送に海外の方の熱心なコメントが多く見られて、いち視聴者としても『スパロボ』が世界に広がったんだなと感じています。

最上さん:我々としてもビジネス的な面はもちろん、配信などでの反響も含めて海外のユーザーさんがいるということは当然意識していますし、彼らの声も気にしております。私が『スパロボ』の開発に入ってから5年くらいになるのですが、今回は各地域のイベントであったり、海外のWEB番組で取り扱いたいという声が一番多い印象があり、期待いたただけているのかなと感じています。

──海外で先行される情報もありますが、現在は日本でもWEBでの情報発信を頻繁にされているように見受けられます。『うますぎWAVE』や『生スパロボチャンネル』での情報発信に関しては、どのような狙いで行われているのでしょうか。

最上さん:どちらかと言えば、今までよりも発表から発売までに少し時間が空いてしまったのが大きいかもしれません。『X』や『T』の時は、年度末のリリースに向けてガッと情報を出していきましたが、今回は開発期間もスパンが開いたので、これまでよりも準備しました。

寺田さん:『スーパーロボット大戦 鋼の超感謝祭2021』での本格的な情報展開を皮切りにし、生スパロボチャンネル』で主情報を出して『うますぎWAVE』で細かい情報を補足しています。特に『うますぎWAVE』には『スパロボ30』のオリジナル主人公を演じていただいた杉田智和さんと相沢舞さんが毎週出ておられることもあり、開発裏話などをしていこうと思っています。

『スパロボ』という固定観念を破壊する転換期

──年々進化をし続けている戦闘アニメーションですが、今はどのような体制で制作が行われているのでしょうか。

寺田さん:『スパロボ30』の開発は『T』が終わってそのままスライドしたんですが、コロナ禍でリモートワークを導入し、体制も変わっていますね。『スパロボ』は参戦作品の機体やキャラクターをどこまで出せるかという物量との戦いでもあるので、刷新部分についてはかなり悩みます。機体の総数を調整して全て刷新という手もありますが、それだと参戦作品の数が減ってしまう。ハードの性能が上がっていることもあって、実際の作業量とユーザーさんのニーズが噛み合っていない部分があることは認識しています。

ただ、それはあくまでも開発側の都合であって、高クオリティの戦闘アニメーションとボリューム、ゲームとしてのおもしろさを並び立たせるのが目標の一つであると思っていますし、逆に参戦作品が少なくても、ロボットの戦闘アニメーションを派手にしなくても、別の楽しみ方をユーザーさんに提供するという手もあると思っています。過去の『スパロボ』は今より登場機体も武器も多かったんですが、戦闘アニメーションの作業が増加していくに従って、その数が減っていきました。そこをボリューム不足だと指摘されるユーザーさんもいらっしゃいます。いずれにせよ、『スパロボ』の固定観念に自分たちが縛られてしまっているところはあるので、それをどう壊していくかという転換期に来ていると思います。

物量とクオリティのバランスをとるのは他のゲームでも難しいと思いますが、『スパロボ』はロボットの戦闘アニメーションが売りのひとつになっていますし、かといって今のままではジリ貧になってしまう。変わらなければマンネリと言われますし、変えてしまうと改悪と言われてしまうかもしれない。長く続いているシリーズなので、そういうジレンマを多く抱えています。ただ、あくまでも個人的には昔の『スパロボ』のように「いろんな機体やキャラクターが出てくる」「原作の武器はだいたい付いている」という方向性に戻しつつ、クオリティと物量のバランスを取っていければと思っています。もっとも、それをやるとなると戦闘アニメーションの作り方や見せ方を変えていく必要があるでしょう。数を絞って演出のクオリティをさらに上げるか、一定のクオリティに抑えつつ見せ方を変えて数を出していくか。まだ『スパロボ30』のDLC関連の作業をしているところなので、今後については未定ですが、継続していく部分と変える部分の見極めをやらなければならないと思っています。

──固定観念と言う意味では、昨今だと参戦作品の幅がかなり広くなったと感じています。作品を参戦させるうえで、ここまでは許容できるという線引きはどこにあるのでしょうか?

寺田さん:個人的な線引きは原作「ロボットやメカ、またはそれに近しいものが出ている」「バトルをしている」ですね。でも、スマホアプリの『X‐Ω』ではそこも外した作品も出ています。『X‐Ω』は家庭用『スパロボ』とシステムが違いますし、番外編のような短編シナリオで他との共演が難しい作品も出せます。それで、『スパロボ』の参戦作品の枠が広がり、『スパロボ』を知らなかった人にも認知してもらえることもありました。ただ、『スパロボ30』だと『X‐Ω』のように割り切った扱いは難しいし、家庭用『スパロボ』だけを遊ばれているユーザーさんには受け入れられにくいのではないかと思っています。

最上さん:担当者の制約や考え方がある程度反映されるとは思いますが、『X‐Ω』では出せるような作品を『スパロボ30』で出すと「それよりも、こちらを出して欲しい」というお客さんの要望が山ほど出てくると思います。もちろん、『スパロボ30』でもお客様の出して欲しい要望をすべて叶えられてはいませんが、そうは言っても家庭用ゲームとして望まれているものがあると思いますので、割と「スパロボらしいもの」を入れたいと思っています。

寺田さん:『スパロボ』に参戦する作品の線引きはユーザーさんによって違いますし、私が「これはスパロボに出せる」と思っていても、「それは違うだろう」と仰る方もいるでしょうし。いろいろ出してみて、ユーザーさんの反応を見て方向性を定めていくことになるのかなと思います。『スパロボ30』のDLCで参戦する作品の一部はその試金石でもありますので、ユーザーさんの反応が気になりますね。

■スーパーロボット大戦30

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