住友ゴム、サステナビリティ長期方針説明会 天然ガスの代替えエネルギーに「水素」を利用

サステナビリティ長期方針『はずむ未来チャレンジ2050』とは

住友ゴム工業株式会社 執行役員 サステナビリティ推進本部長 山下文一氏

続いてサステナビリティ推進本部長の山下氏が登壇。まず、2020年度の中期経営計画にて、事業を通じて環境問題や社会課題の解決に貢献し、社会をサステナブルにするための取り組みを強化することを宣言したことを紹介。同時に自社と社会が持続的成長を遂げるには、「2050年を見越した長期視点での方針・計画が必要になってくる」と山下氏。そして今回発表したサステナビリティ長期方針については、昨年発表している新企業理念体系“Our Philosophy”の中で制定した「未来をひらくイノベーションで最高の安心とヨロコビをつくる」という企業の存在意義を体現するための方針であると解説した。

また、サステナビリティ長期方針は、“はずむ未来を実現する”という想いから『はずむ未来チャレンジ2050』と命名。環境・社会・ガバナンスと3つのカテゴリーでそれぞれチャレンジ目標テーマをしっかりと掲げ、グループ全社員が一丸となって取り組むという。特に環境のカテゴリーでは、「調達」「輸送」「開発」「製造」「販売」といったサプライチェーン全体を通じて、CO2の削減と原材料のバイオマス化とリサイクル化、サステナブルな商品開発を推進しつつ、最先端のセンシング技術も用いることで安全・安心で環境負荷の少ない新たなソリューションサービスを開発し、2030年はもちろんのこと、2050年に向けて循環型ビジネスの確立を目指すとしている。

住友ゴム、サステナビリティ長期方針説明会 天然ガスの代替えエネルギーに「水素」を利用

その中でも、バイオマス原材料の活用、次世代エネルギー“水素”の活用、サステナビリティ商品の基準制定など、スマートタイヤコンセプトの2050年に向けた新たな取り組みについての紹介も進められた。

サステナビリティの実現には長期的な計画が必要となる住友ゴム工業は社会と企業の持続的な成長を目指している「はずむ未来チャレンジ2050」の概念図「はずむ未来チャレンジ2050」の全体像目指している循環型環境ビジネス概要住友ゴム工業独自の3つの新たな取り組み

スマートタイヤコンセプトの開発計画について山下氏は、安全性能を高める「セーフティテクノロジ」、環境性能を高める「エナセーブテクノロジ」を部分的に搭載したタイヤを商品化してきた事例に触れつつ、今後はLCA(ライフサイクルアセスメント)を基軸に置いて、より安全で環境に優しいサステナブルなタイヤの開発を加速させると語る。さらに計画では、2029年までにスマートタイヤコンセプトの全技術を完成させ、空気入りとエアレス(空気なし)の2つのコンセプトタイヤを提案。翌2030年以降は発売する製品すべてにスマートタイヤコンセプトの技術を搭載するとした。

また、まだ世の中でサステナブルといった単語が頻繁に使われる前の2013年に、すでに原材料に化石資源を使用しない、世界初の石油外天然資源タイヤを販売していることを紹介。今後もその技術をさらに進化させることで原材料のバイオマス比率を高めつつ、同時にリサイクル原材料比率も高めていき、2030年にはタイヤのサステナブル原材料比率を40%にまで高め、2050年には100%とし、カーボンニュートラル実現に貢献したいという。これはタイヤだけでなくゴルフボールやテニスボール、その他の産業品についても同様で、2050年にはサステナブル原材料比率100%を目指すとしている。

スマートタイヤコンセプトの考え方スマートタイヤコンセプトの開発スケジュールサステナブルタイヤ実現までの予定タイヤ以外の製品における今後の計画

山下氏は製造段階におけるカーボンニュートラルの取り組みについても言及し「工場からの排出CO2をグローバルグループ全体で2030年までに50%まで削減、2050年にはカーボンニュートラル達成を目指している」と紹介。そして、その実現方法については、従来から取り組んでいるコージェネレーションや太陽光発電といった省エネ活動については継続しつつ、タイヤの加硫工程で使用する蒸気エネルギーについては現在の天然ガスからのエネルギー転換が必須条件であると解説。その代替えエネルギー資源としては、次世代エネルギーとして注目されている「水素」を活用することに決定したと明言。

すでに8月から震災の復興支援も含め、福島県にある白河工場で実証実験を開始。2023年には太陽光発電と水素を活用することで、「メタルコア工法」「全自動連結コントロール」「高剛性構造」の3つのキー技術を採用する次世代新工法「NEO-T01」の全工程をクリーンエネルギー化させ、製造時におけるCO2排出ゼロタイヤの実現を目指す。その後は工場全体に、いずれは海外工場への展開も検討しているという。

こうしたCO2削減、サステナブル原材料比率の増加はタイヤだけでなく全事業に展開すると同時にSSP(住友ゴムサステナビリティ商品)として自社基準を制定し、循環型社会への貢献も推進していくとしている。加えてプラスチックの使用量についても、2030年までのグローバルで2019年比40%削減を目指すとしている。

カーボンニュートラル化に向けてのスケジュール白河工場(福島県)における水素燃料利用計画の概要サスティナビリティ商品に関する住友ゴム工業の自社基準プラスチック素材の削減活動の取り組み方針自社での活動だけでなく外部の活動にも積極的に参画

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1352855.html