人手不足を救う調理ロボ、鍵は「AI活用」にありーースタートアップが語る注目テクノロジー/コネクテッドロボティクス代表取締役、沢登哲也氏

本稿はIBM BlueHubによる寄稿。スタートアップとの共創プログラム「IBM BlueHub」では2014年の第1期スタートから現在まで、参加した多くのスタートアップが大手企業との事業提携やVCからの資金調達を実現している。第5期のDemo Dayは3月18日に開催される

前回からの続き。IBM BlueHubでは3月18日に開催する「第5期 Demo Day」を控え、プログラムに参加してくれたメンターや卒業生などを中心に、B2B領域におけるSaaSなどのトレンドについてそれぞれの見解を語っていただきました。前半は主にベンチャーキャピタリストによる市場トレンド、後半はスタートアップによる技術トレンドをリレー形式でお送りします。

スタートアップの注目テックパート、4人目のトラジェクトリーの代表取締役CEO、小関 賢次氏からバトンを受け取るのは調理ロボを手がけるコネクテッドロボティクス代表取締役の沢登哲也氏です(太字の質問は全て筆者。回答は沢登氏)。

連載ではVCのみなさんにクラウドビジネスのトレンド、スタートアップのみなさんには技術トレンドをお聞きしています。前回はドローンがテーマでしたが、沢登さんは調理ロボットに取り組んでおられるのですよね

沢登:はい、コネクテッドロボティクスとして第一弾となるたこ焼きロボット「OctoChef」は昨年、長崎ハウステンボスさんに導入しました。ややコモディティ化してきた協働ロボットと深層学習による「知能化」の合わせ技と、私がロボットアームのコントローラー・ソフトウェアをかれこれ10年ほど開発してまして、そのノウハウを活かして調理ロボットサービスの開発に取り組んでいます。

こういった調理ロボットが社会に与えるインパクト、価値ってどういうものになるのでしょうか

沢登:私たちは「調理をロボットで革新する」をテーマに、外食産業の人手不足解決、日本食レストランの世界展開アシスト、出来立てほやほやの食べ物を届ける、といった3つの価値がミッションですね。

では、お伺いしている技術トレンドなのですが、沢登さんがロボット関連で注目しているテーマはどのようなものでしょうか

人手不足を救う調理ロボ、鍵は「AI活用」にありーースタートアップが語る注目テクノロジー/コネクテッドロボティクス代表取締役、沢登哲也氏

沢登:技術トレンドとして重要なのはまずハードウェアとしては協働ロボットの普及と進化、そしてモジュラー化です。数年前まで400万円〜500万円したロボットが今では、300万円〜200万円で購入することができるようになってるんです。またカメラや触覚センサーなど各種機器も高性能かつ安価に手に入るようになってきました。

ハードウェアがコモディティ化してくると、ますます重要なのはソフトウェアになります。特に深層学習の活用が重要になってきているんですが、とりわけエンジニアリングする上ではエッジとクラウドをうまく使い分けて、学習モデルの構築と推論をそれぞれのパフォーマンスとして最適化させるのが重要なテーマとなっている。

なるほど、処理を考えればロボット単体でやった方が早そうですが、ロボットを「サービス」として考えればクラウドは必要になる。事業としてのロボットを考えることが重要とも言えそうですね。注目している企業を挙げるとしたらどちらになりますか

沢登:コモディティ化したロボットというハードウェアを使ってソフトウェアで付加価値と差別化を実現したサービスを提供するという意味において、国内ではセンシンロボティクスやリンクウィズといった企業に注目してます。

また海外ではアメリカのZume Pizzaが、ロボットとトレーラーを活用することで(ピザの)デリバリーをオペレーションとユーザー体験の両方から革新していますね。

日本がこういった技術活用を推進する上で必要なことは

沢登:日本が技術活用をすすめる上で考えなくてはいけないのは、サービスやオペレーションの局所最適化ではなく全体最適化です。

具体的に言うと、例えばロボットやAIを使う上で、それを単なる孤立したツールとして捉えるとうまくいかない場合が多いです。もちろん、シンプルで使いやすいものに越したことはありませんが、たとえば私たちの取り組む調理ロボットシステムは、それによって単にキッチンのひとつの仕事を人間からロボットに置き換えるのではなく、キッチンそのものを全体として合理化しなければなりません。

処理問題でもクラウド・エッジの使い分けと全体最適が必要でしたが、事業として考える上でもその観点が必要になると

沢登:全体のオペレーションを俯瞰して見渡しながら「何が必要なのかを」考え、コーディネートすることが必要になるんです。私たちの場合であれば、導入する飲食業の事業者さんだけでなく、厨房機器メーカーさんのように協働するパートナーとの連携が必要になってくる、ということですね。

ありがとうございました。バトンを次のスタートアップにお渡しします

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