東京電力福島第一原発のいま(福島)

東京電力が今直面しているのが、処理水の海洋放出と、2022年初めての取り出しを予定している燃料デブリの2つの壁です。内田アナウンサーが、原発のいまを取材しました。内田「福島第一原発の構内です。免振重要棟へと続く道ですが、みなさん防護服なしで歩いています。」かつては防護服が不可欠だった敷地内部。除染や地面の舗装などで、放射線量が下がり、ほとんどのエリアで防護服を着ずに過ごすことができます。東京電力高原さん「現在敷地の96%に程度にこのような軽装で作業することができるようになっています」こちらは2015年に作られた大型の休憩所です。内田「大型休憩所の中には、食堂のほか、コンビニも入っています」約1200人の作業員が、一度に利用することができます。内田「麺にカレー。そして、定食など日替わりで5種類のメニューが提供されています。献立もl多彩です。」作業環境は着実に改善されていますが、肝心の廃炉への道のりは前途多難です。大きな課題となっているのが、「処理水対策」と「燃料デブリの取り出し」です。内田「福島第一原発の海に近いエリアでは、巨大な穴が掘り進められています。海水と混ぜられた処理水は、一旦、この場所を通過することになります」敷地内では深さ約18mの穴が掘り進められています。溶け落ちた核燃料に触れ、汚染された水は「ALPS」と呼ばれる設備などでほとんどの放射性物質が取り除かれます。これが処理水です。しかし放射性物質の「トリチウム」が残るため処分方法が決まらず敷地内の1000基を超えるタンクにため続けています。海洋放出する場合、処理水は一度、測定・確認用のタンクに貯められます。そして、基準を満たしていると判断されると、大量の海水と混ぜられ今、建設している放水立坑と呼ばれる巨大な水槽に送られます。内田「巨大な穴の底から、今度は沖に向かって海底トンネルが掘られる見込みです。処理水は、そのトンネルの先から放出される計画です」放出先は沖合約1キロ。海底トンネルを伝い、水深12mほどの場所から海中へ放出されます。自然界にも存在し、世界各地の原発でも放出されているトリチウム水。安全といわれている処理水を、なぜ、わざわざ沖合で放出する必要があるのでしょうか。東京電力・高原さん「やはりいろいろと風評の影響であるとか、そういった話を聞いたところ、皆さんの意見を伺いながら最適なところを我々として選んだということです」政府は、海洋放出で売れ残った魚を一時的に買い取る基金など300億円を風評対策基金に計上しました。しかし、風評被害は未知数で、具体的な補償の形も示されていないため地元の反対は根強く残っています。東京電力廃炉推進カンパニー小野プレジデント「関係する方々が思っておられる心配とか懸念とかを一つひとつ丁寧にお伺いしながらご理解いただけるように、しっかりと愚直に説明を尽くしていくことが非常に大事だとおもっている」政府と東京電力が最長40年以内と言い続けている廃炉。その最大の壁となっているのが原子炉格納容器内に溶け落ちた燃料デブリです。1号機から3号機の中にはあわせて880トンあると推定されています。東京電力はデブリの試験的な取り出しを2号機から始めることにしました。この取り出しはロボットアームと呼ばれる装置を使い遠隔操作で行います。放射線量が高く人が入って作業ができないためです。「一番早く、燃料デブリの試験的な取り出しが始まる計画の2号機。その2号機と格納容器の構造が全く同じなのが、1㎞ほど北に位置する福島第一原発5号機です。」大きな被害を免れた5号機。特別に建屋に入りどのようなルートでロボットアームを入れるのか取材しました。「ピンクの紙で覆われているのは?」「格納容器との貫通孔となっています」「この穴からロボットアームを入れるような感じですか?」「はい」震災当時定期点検中だった5号機。格納容器内の燃料は、2015年に使用済燃料プールに移された為、この中にはありません。しかし、ここから先は、核燃料を出し入れしたエリアで放射性物質が残っている為、防護服に着替える必要があります。東京電力高原さん「穴の先にあるのが、この先がペデスタルと呼ばれる部分になります。燃料の集合体は、ペデスタルの上方にある原子炉圧力容器にあるということになります」圧力容器を支えるコンクリート製の構造物・ペデスタルの中。つまり、核燃料の真下に進んでいきます。放射線量は上昇します。「ここ短時間にするので」「じゃあ早めに行きましょう」「この真上に原子炉圧力容器があるので、もし万一、圧力容器を突き破っているとするなら(デブリが)この上から降りている可能性がある」「このように足場が組まれているが、溶け落ちた核燃料によって、この足場も溶けている可能性があります」足場の3メートルほど下には、機械などが置かれたフロアが広がっていて、このフロアを中心に燃料デブリが堆積していると考えられています。「ロボットアームは先ほどの穴からこの場所まで通しまして、さらにこの下に伸ばしまして溶け落ちた核燃料を取り出すことになります」今年、「燃料デブリ」の取り出しが始まる予定ですが、その量はわずか耳かき1杯分程度になる見込みです。東京電力高原さん「格納容器内に見えるカメラがないので、そのカメラがロボットアームについているカメラしかないと。視野が1つしかないというところでの作業になることが難しいと考えています」取り出しを終えるまでどのくらいかかるのか。試験的な取り出しに使うロボットアームを改造すれば最大で10キログラムまで持ち上げることができると言います。しかし、仮にトラブルなく1日も休まずに毎日10キロ取り出し続けたとして241年。50キロずつだとしても48年かかります。しかも、デブリには原子炉にへばりついているものもあり、取り出すためには新たな装置の開発も必要になります。政府と東京電力は「廃炉完了まで残り29年」と掲げていますが…。原子力規制委員会更田委員長「現実的に、例えば様々な方面に対して約束できるような年数を確定させるのは、私は技術的に不可能だというふうに思っています。」福島第一原発の廃炉には、あまりにも高い壁が立ちはだかっています。

最終更新:KFB福島放送

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