サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイト 4月からプラ新法施行 使い捨てスプーンやフォーク、小売業界の対応は?

EireneFagus

プラスチックごみの削減やリサイクル強化に向けた、いわゆる「プラスチック新法」(プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律)が今年4月施行される。この中で注目される一つが、小売店や飲食店などで無料で提供される使い捨てスプーンやフォークなどのカトラリーの取り扱いだ。こうした“ワンウェイプラスチック”について国は「プラスチック資源循環戦略」の中で、2030年までに累積で25%の排出を抑制する目標を示しているが、新法はこの目標を達成する追い風になるのか――。現時点での各社の動きをリポートする。(廣末智子)新法は、プラスチックを使用する製品の設計から廃棄物処理に至るライフサイクル全般での“3R(リデュース・リユース・リサイクル)+Renewable(再生可能)”を促進し、サーキュラーエコノミーへの移行を加速する法律だ。商品の販売やサービスに付随して無償で提供される使い捨てプラスチックに関して、スプーンとフォークのほか、テーブルナイフ、マドラー、飲料用ストロー、ヘアブラシ、くし、かみそり、シャワーキャップ、歯ブラシ、衣料用ハンガー、衣類用のカバーの12 品目を「特定プラスチック使用製品」と定める。その上で、これらの年間使用量が5トン以上の事業者に、消費者が受け取るかどうかの意思確認と、受け取る場合は有料化、さらに受け取らない人へのポイント還元などの優遇措置、再利用の呼び掛け、あるいは軽量化や代替素材への切り替えを義務化する。有料化はあくまで選択肢の一つだ。

大手コンビニ3社、軽量化や木製へ切り替えが中心か

そうした中、大手スーパーやコンビニからは現時点で4月からカトラリーをレジ袋のように有料化するといった動きは聞こえてこない。大手コンビニ3社の方針をまとめると以下の通り、軽量化や代替素材への切り替えが中心となりそうだ。昨年6月〜7月、環境省の実証実験の一環で、都内6店舗でカトラリーを辞退した客にnanacoポイントを3ポイント分(3円分)付与する取り組みを行ったセブンイレブン。実験の結果は開示されていないが、広報担当者によると、現時点ではこうしたポイント還元のほか、既に沖縄県の店舗で実施している30%バイオマスを配合したカトラリーの提供を広げることも含め、「あらゆる観点で対応を検討中」という。一方、ファミリーマートは軽量化を進める方針で、スプーンについては既に持ち手の部分を穴の開いたデザインにして従来品より約12%プラスチック使用量を削減したものを全国の店舗で導入済みだ。フォークについても同じデザインで従来品よりプラスチック使用量を約8%削減したものを1月25日から関東と東海、甲信地方の約8700店で提供し、今夏には全店に拡大する。これにより、スプーンとフォークを合わせたプラスチックの使用量を年間で約87トン削減できる見込み、としている。

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またローソンは昨年8月から都内のナチュラルローソンの一部店舗で開始した木製のスプーンを提供する実証実験を現在も継続している。現時点で新法に伴う大幅な切り替えなどは公表していないが、「実証実験中の木製カトラリーをはじめ、さまざまな取り組みにチャレンジし、プラスチックの削減目標を達成していきたい」とするコメントが寄せられた。3社に限ったことではないが、共通するのは各社とも新法施行に関わらず、環境ビジョンにおいてプラスチック削減は重要なテーマであり、独自のKPIに基づいて削減を図っていることにある。その趨勢は大手スーパーも同じだ。

「新法に合わせた動きは特にない」 大手スーパー、粛々とプラ削減

イオンは2020年9月に策定した「プラスチック利用方針」の中で、脱炭素型且つ循環資源型の新たなライフサイクルの定着に向け、「事業活動における資源の無駄使いや使い捨て型の利用を見直し、使い捨てプラスチックゼロを目指す」「必要なプラスチックは化石由来から環境・社会へ配慮した素材へ転換する」「店舗を拠点に使用済みプラスチックの回収・再利用・再生する資源循環モデルを構築し、お客さまとともに持続可能な資源循環に取り組む」の3つを定める。広報担当者によると「新法に合わせた動きとしては特にない」というが、カトラリーについても利用の有無の確認を徹底させるのはもちろん、事業会社単位でリサイクル素材のものを配布する実験を行うなど、素材の置き換えを中心に進めている。上記の方針の中で掲げた「2030年までに2018年度比で使い捨てプラスチックを半減させる」というグループ全体の目標に向け、一足飛びにはいかないものの、粛々と環境を整えているところだ。一方、関東や近畿でスーパーのライフを285店舗展開するライフコーポレーションは4月以降、プラスチック製ストローを紙製に、スプーン(フォークを兼ねた先割れタイプのものとの2種)を木製に順次、切り替える。広報担当者によると、いずれも必要な客が自ら持ち帰るセルフ方式で、スプーンは「FSC認証材」を、ストローは「限りなく、認証を受けられるものと同じ素材」を使用。切り替えの開始時期は新法のスタートと重なったが、あくまで自社のプラスチック削減方針の一環で行うもので、これにより、年間約1700万本のプラスチック製スプーン・ストローの削減につながるという。

有料化に踏み切る企業は一部「お客様の負担考えるとやはり戸惑う」

もっとも有料化については「お客さまの負担を考えるとやはり戸惑う」(ライフ)というように、新法を機に有料化に踏み切る方針を示す大手スーパーやコンビニは法施行まで3カ月を切った現時点で見当たらない(洋菓子など製造販売のシャトレーゼなど、既に使い捨てスプーンを1本2円といった価格で有料化している企業も一部にはある)。新法がスタートしたからといって、2020年7月のレジ袋有料化のように、スプーンやフォークといったワンウェイプラスチックに代表される「特定プラスチック使用製品」の有料化が一斉に始まることはないようだ。

意識啓発へ 環境省「えらんで減らしてリサイクル」サイト開設

一方、新法の具体的な内容を定めた政省令が閣議決定された1月14日、環境省は「プラスチックはえらんで減らしてリサイクル」と銘打った特設サイトを開設し、新法に対する事業者や消費者の意識を啓発。この中で改めて2019年5月策定の「プラスチック資源循環戦略」の概要を記し、ワンウェイプラスチックに関しては「2030年までに累積で25%排出抑制する」ことを「野心的なマイルストーン」として強調している。果たして新法はこのマイルストーンを達成する追い風となり、わが国のプラスチック削減に向けた本質的な解決策につながるのか――。

減プラ社会を目指すNGOら「新法は不十分」 特定プラは有料化要望

閣議決定がなされた同日、WWFジャパンら「減プラスチック社会を実現するNGOネットワーク」のメンバーおよび賛同する27団体は、新法の内容は不十分であり、プラスチック汚染問題全体を包括的に解決するための基本理念となるような「基本法」の早急な制定を求める共同提言を、環境大臣と経済産業大臣に宛てて発表した。この中で、ワンウェイプラスチックについて、新法では有料化が「数あるオプションの一つに過ぎない」ことを問題視。レジ袋の辞退率がポイント還元の励行といった手段で推奨されていた時期には長年横ばいが続いていたのが、有料化によって15%以上跳ね上がったという日本チェーンストア協会の調査事例からも「有料化が有効な手段であることは明らかである」として、「特定プラスチック製品については有料化の義務、または提供禁止とすべきである」と要望。またフランスでは今年1月から野菜、果物のプラスチック包装は禁止され、違反した場合は最大で1万5000ユーロ(約193万円)の罰金が科されるなど、先進的なルールづくりが進んでいることを例に、新法でも特定プラスチック製品の12品目に、発泡スチロール製食品トレイや、野菜や果物に使用されている過剰なプラスチック包装など、容器包装リサイクル法におけるプラスチック容器包装を加え、それらの有料化や提供禁止をしなければ「削減効果は一部にとどまる」と指摘している。「スプーンやフォークをお付けしますか」といった声掛けはコンビニやスーパーでも既に一般的であることからしても、消費者にとって目に見える生活の変化やインパクトにはつながらないのかもしれないプラスチック新法。有料化がなされなくとも、スプーンやフォークを辞退する人は増えるのか。一人ひとりの意識が問われている。

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