プール水、飲用可まで5分 産学連携で装置開発

大規模災害時の飲料水確保などを想定し、学校に貯めてあるプールの水を約5分で飲用可能に濾過(ろか)する装置が開発された。濾過装置と殺菌効果が高いとされる「深紫外線」を応用。装置は軽ワゴン車に搭載し、飲用水が必要な被災地などへも移動しやすくした。産学連携の取り組みで、来年春の販売開始を目指している。

深紫外線は、紫外線の中でも波長が短く、殺菌効果が高いとされる。

和歌山市の総合水処理会社「ローレル」と三重県紀北町の土木工事会社「岡本組」、近畿大学の江口陽子・生物理工学部准教授が協力。医療機器メーカー「日機装」(東京)の深紫外線LED照射装置を活用し、軽ワゴン車を改造して移動可能な濾過装置にした。

 プール水、飲用可まで5分 産学連携で装置開発

プールからくみ上げた水を複数の濾過装置に通し、深紫外線を照射すれば、濾過された水が蛇口から出てくる仕組み。約5分間で、水道水と同じ項目の水準をクリアした飲用可能な水にできるとしている。

今年8月と9月に旧和歌山市立雄湊小学校のプールで2回、約5年間入れ替えていない水を飲料水にする実験をした。

その結果、1回目の実験では水道水と同じ項目で全基準を満たせなかったが、濾過装置を改良した2回目の実験では全基準51項目を満たすことに成功した。

11月15日には、このプールで報道関係者向けの発表会を開催。プールの水を、通常の水道水と同じ基準の水にしてみせた。

今後、大規模災害時の避難所など、飲料水を早急に確保する場面などで活躍が期待される。池の水には農薬が入っている可能性もあるため、実際の大規模災害時にも、プールの水の使用を想定しているという。

開発にあたった岡本組の三目晴造・省エネルギー部長は、平成23年の紀伊半島豪雨で被災し、飲料水の確保に苦労した経験があり、「人々にとって、水は『命の水』。今回開発した技術を、命を救う減災に役立てることができれば」と話している。