オリンピック選手の競泳水着は普通のスイマーでもビビるくらい速い:Fastskin LZR レビュー

東京五輪の金メダリストも着ている水着、一般人が試すとどうなる?

泳ぎに自信がある米ギズモードのBrent Rose記者が実際に着用して試してみました。なんと一般人でもタイムが劇的に速くなったそうです。


北京オリンピックを席巻した、全身を覆うタイプのSpeedoの高速水着「レーザーレーサー(LZR Racer)」。この水着はチートとして正式に禁止となったわけですが、このショートパンツに効果があるのかどうか、半信半疑でした。

私は現在スパンデックス製の伸縮性のある水着を愛用しています。たかがショートパンツにどれほどの違いがあるというのか、実際に試してみたいと思います。

Speedo Fastskin LZR Pure Intent

これはなに?:オリンピック選手も着用している競泳水着

価格:男性用は約4万〜4万9000円(365〜400ドル)、女性用は約4万9000円〜約6万5000円(450〜600ドル)

良いところ:水分子を突き破る感じではなく、その間をすり抜けるような感覚で抵抗を減らしてより速く泳ぐことができる

残念なところ:ウェブサイトのサイズ表と箱に書いてあるサイズ表が微妙に違うという問題がある。着脱が非常に難しい。値段が高い

オリンピック選手のための水着

試したのは、SpeedoのFastskin LZR。2008年の北京オリンピックでは、全身を覆うタイプのSpeedoの「レーザーレーサー(LZR Racer)」の競泳水着を着用した選手はメダル獲得数の98%を占め、叩き出された25個の世界記録のうち、23個を更新したことで有名でした。あまりにチート過ぎて「テクニカルドーピング」と呼ばれるようになり、翌2009年には、競技での着用が禁止され、競泳選手が着用する水着は、男子は腰から膝まで、またはそれ以下を覆う水着のみ、女子は肩から膝までを覆うものにすべしと、ルールまで変わるほどの威力でした。

アメリカのケーレブ・ドレッセル選手(東京オリンピックで金メダル5個獲得した選手!)、ハリ・フリッキンジャー選手などのオリンピック選手が着用している水着で、チームUSAバージョンは、アメリカ国旗のようなデザインですが、普通のデザインであれば、誰でもオンラインで購入できます。

オリンピック選手の競泳水着は普通のスイマーでもビビるくらい速い:Fastskin LZR レビュー

着心地は

まずサイズには要注意です。私のウェストはだいたい31インチ、Speedoのウェブサイトのオンラインサイズチャートによれば、サイズ22でちょうど良さそうでしたが、間違えました。サイトにはヒップのサイズも表示されていましたが、自分のヒップサイズなんか知らないですし、まあ良いかとスルー、ウェストさえ合ってれば大丈夫かなと思っていましたが…全然大丈夫ではありませんでした。届いた水着は「これ子供用じゃないよね?」ほど、どう見たって着るの無理。この水着は、普通の水着にはあるはずの伸縮性がありません。膝から上を上げることができず、結局履けませんでした。誰も見ていなかったけど、すごく辱めを受けた気持ちになりました。

この失敗のあと、改めてヒップサイズを測ってみると、自分は39インチ、サイズ24すら合っていませんでした。Speedoは大きいサイズを送ってくれました。元水泳選手の友人は「足と胸の毛を処理しないと意味がない」と言われました。

ついにサイズ24が届きましたが、どうみてもあり得ない小ささ。水泳選手の友人によれば、こんなのは普通だ、もがいて身体をねじ込んで「頬をつまんで入れる」必要があると言います。5分ほど水着を着るのに格闘、腰とお尻の部分がめちゃくちゃきつくて何度も引っかかりました。腰の肉がくいこんだりして、痛いし辛い。毛が引っ張られそうだったので、すね毛を剃っておいて良かったですね…。やっぱりサイズ25でも良かったかもしれません。

そして実際に着用できれば、これが正しいような気がします。着心地は良くないのですが、プロも着用しているのと大差ないという意味で「正しい」のだろうと思います。水着は腰より低い位置にあります。着圧仕様なので、圧迫感を感じます。私の尻は今まで見たことないほど平らになっていました。きつくて動きづらいのですが、まだ充分な可動域があるようです。ともあれ、泳いでみようではありませんか。

泳いでみる

プールに飛び込んだ瞬間、「何かが違う」とわかりました。泳いでみると、水着の着用部分だけ、水の感触をあまり感じません。水の中をすいーっとラクに滑るような感覚を得ましたが、それは気のせいかもしれないので、ちゃんと泳いでテストしてみます。25ヤード(約23メートル)のプールで、100ヤード(約93メートル)、200ヤード(約186メートル)、さらに100ヤードを全力で泳いでみます。まず、10年愛用してきたスパンデックスの水着で泳いでみて、その後一旦休憩して昼食をとり、Fastskin LZR Pure Intentで泳いでみました。

結果は…なんてことでしょう。違いは明らかです。100ヤードで12秒以上、200ヤードで26秒以上も速く泳げてしまったのです!

これは魔法。2回目の100ヤードをLZRで泳いだときは、腕に力が入らなくなったのですが、それでも6秒以上は速くなっていました。数日後にも、今度はLZR Pure Intentを最初に履いて同じ一連のテストを繰り返してみましたが、結果はほぼ同じでした。ただし2セット目は古い水着を着用していたのでさらに遅くなっています。

このタイムは、Garmin Enduro ウォッチを使って計測していますが、自動的にラップ数をカウントしてタイムを測ってくれますが、セットの最後に立ち止まるたびに数秒ずつ遅れるので、それぞれ3〜5秒ずつ差し引くことができますが、だいたいすべてのセットで一貫していたようです。

デザイン

自分のテスト結果を確認した後に、私はSpeedo社にこの水着にはどんな魔法がかけられているのか質問してみました。

最新のFastskin競泳水着は、20年間のパフォーマンスの学習と革新的な技術と素材を掛け合わせて設計しています。Speedoは、世界有数の研究機関の協力を得ながら、サメの先祖が泳ぐときの水の抵抗を減らす方法を研究してきました。またSpeedoは、この水着の開発のために、ロンドンの自然史博物館やF1など、さまざまな研究パートナーとコラボレーションしています。

との回答をもらいました。な、なるほど、サメの先祖ね…。ジョーズの遺伝子検査とかで高速の水着を開発したってこと? よくわからないけどかっこいい。

水着の外側を触ってみると、スパンデックスの水着のようにサラッと柔らかいものではなく、少しザラッとしています。ウェブサイト上には、「サメの肌を模したテクスチャーで、水着の表面にある小さな渦は、水の抵抗を減らし、前方への推進力を高める」と書いてありました。素材自体は高品質なレインコートのようです。実際、水着を水道の蛇口の下に置いてみたら、水が一瞬で撥水し、ほとんど流れ落ちていきました(ちなみにスパンデックス製の水着は吸水していました)。つまり、この水着には撥水性があって、実際に水の中を少ない摩擦で泳ぐことができます。

ウェスト部分の裏地には、1本ではなく2本のシリコンバンドがあって、着替えるときに体毛が引っ張られる効果だけでなく、水が水着の中に侵入してスピードダウンしてしまうのを防いでくれます。

また、この水着は縦方向の伸縮性は非常に高いのですが、横方向はキッツキツです。これは可動域を狭めずに着圧を高めるためだと思いました。

お尻部分には、六角形のパターンがわずかに突き出ていますが、サイバーパンク風に見える以外の効果は自分にはよくわかりませんでした。

結論:魔法のように速くなる

この競泳水着はクールだし、私でも明らかに泳ぎが速くなりました。私はレベル高めとはいえアマチュアですが、実際にトレーニングを積んでフォームを整えている人にとっては、さらに有利になるのではないかと思います。

とはいえ、競技に出ないのなら、ここまで速く泳ぐための水着は必要ないでしょう。ほとんどの人は健康や趣味のために泳ぐので、不必要にスピードを落とさない水着であれば良いと思いますし、運動のためだけだったらボードショーツで泳いだって別に良いと思います。(オススメはしませんが)

でも、ごく普通のスイマーでも目に見えて速くなったというのは本当に魔法のようで驚きました。