長澤まさみ×東出昌大×小日向文世が改めて語る「コンフィデンスマンJP」と互いへの想い「こんなに長い付き合いになると思わなかった」
長澤まさみ、東出昌大、小日向文世が「コンフィデンスマンJP」シリーズを振り返る
人気シリーズ最新作にして映画化第3弾『コンフィデンスマンJP 英雄編』(公開中)で、今回も痛快なコンゲームを繰り広げる3人組を演じた長澤まさみ、東出昌大、小日向文世。劇中はもちろん、番宣や舞台挨拶でも息の合った掛け合いをしてきた3人に、シリーズ集大成となった本作の撮影秘話と共に、長年共演してきたなかで見えてきた互いの魅力について語ってもらった。【写真を見る】長澤まさみ、東出昌大、小日向文世のカッコよすぎる撮り下ろしショット!頭脳明晰なダー子(長澤)、情にもろいボクちゃん(東出)、百戦錬磨のベテラン、リチャード(小日向)は、欲にまみれた人間たちから巨額のお宝を騙し取る“コンフィデンスマン”こと信用詐欺師だ。3人の結束力は固いと思っていたが、彼らの師で、“英雄”と謳われた3代目ツチノコ(角野卓造)が死去したことで、4代目ツチノコの称号をかけて、3人が騙し合いの真剣勝負を繰り広げることに。ダー子たちは、世界遺産の都市マルタ島のヴァレッタで、様々な詐欺を仕掛けていく。■「ダー子たち3人だけでの新たな展開ではなく、プラスαを入れた新しいものに」(長澤)――シリーズ最高傑作と呼び声の高い本作ですが、脚本を読んだ段階では、時制が何度も巻き戻るストーリーを把握するのは至難の業だったとか。長澤「最初に脚本を読んだ時、すっとは読めなかったです。でも、完成した映画を観たら、すごくわかりやすくなっていました」――人気脚本家の古沢良太さんが全シリーズの脚本を手掛けていますが、特に今回驚かされたのはどんな点でしたか?小日向「3代目ツチノコという存在を出したところがすごいなと。毎回よくこんなことを思いつくなあとびっくりします」長澤「古沢さんとプロデューサーさんの成河(広明)さんが仕掛け人ですが、本当にいろんなアイディアを出されます。ダー子たち3人だけでの新たな展開ではなく、そこにプラスαを入れたさらに新しいものを考えるのは実に難しいと思いますが」小日向「今回は、ボクちゃんを本気にさせる展開がよかったよね」長澤「ボクちゃんはいつも本気です(笑)」東出「そうそう(笑)。ただ、自己認識ができてないだけで、いつも本気で生きている」――リチャードも、これまでになかったクールな一面を見せていますね。東出「今回のリチャードはものすごくカッコいいし、クールでちょっと怖いぐらいです。ただ、ドラマを思い返せば、そういえばリチャードって、メンズエステに通っていたなあと改めて思い出しました(笑)」小日向「あったあった(笑)」東出「全員の私生活が謎だらけなので、なんにでもなれますね。破天荒で愉快な仲間たち3人が、底抜けの明るさを人に届けられる点が、シリーズの魅力かと」■「こんな時代だからこそ、底抜けに明るい物語を楽しんでいただければいいなと思います」(東出)――オールスターキャストの布陣ですが、初参加組で特に印象的だったキャストとは?長澤「私は一番絡みが多かったマルセル真梨邑役の瀬戸(康史)さんでしょうか。完璧な頭脳の持ち主同士であるマルセルとダー子が闘うところがおもしろいです」小日向「皆さん、それぞれすごかったのですが、僕的には丹波役の松重(豊)くんかな。本シリーズでは、年が離れている共演者が多いので、近い人が仲間に入ってくれたことがうれしかったです」東出「僕は城田(優)さんと生田(絵梨花)さんが演じたゴンザレス夫妻です。本当に明るいし語学が堪能で、お2人のコンビネーションが現場を盛り上げてくださいました。すでに世界観が作られているところに新しく参加することって、僕自身は苦手ですが、お2人は本当にはつらつとされていて、新しい原動力になってくれたと思います」――今回は、ダー子の言葉にぐっとくるシーンがありました。長澤「私もダー子たちがこの3人でなくちゃいけなかった理由を知って、すごく心が温まりました。ようやくダー子自身の人間味が少し垣間見られたような気がして。今回でダー子自身がもともと強いのか、それとも2人がいてくれたから強くいられるのか、ということがわかった感じがします」東出「僕もダー子の素を見て、感動しちゃいました」――コロナ禍で大変な日々が続いていますが、本作には日々を一生懸命生きている名もなき人たちへのリスペクトや愛が詰まっていたし、“信頼”することがシリーズのテーマになっていたんだと思い、ぐっときました。長澤「ダー子が一番大切にしているのはやっぱり“信じること”で、それはコンフィデンスマンの仲間に対しても、敵に対しても言えることかなと。ダー子は悪いことをした人たちをおしりぺんぺんして成敗しますが、心優しいので人の本質的な部分は信頼していると思います。相手を信頼しないとなにも始まらない。今回は特にそこを深く感じました」小日向「確かにコンフィデンスマンは、命を懸けて美術品を集めていますが、最終的にダー子が必要としているものがなんなのかが、本作で再認識できた気がします。そういう意味で、映画を観終わったあとに、感動するんじゃないかなと」東出「台本をいただく度に、今回は騙されないぞ!と心して読み進めますが、結局映画の結末と同じで、最後にはやっぱり騙されたとうならされます。でも、いつもそのあとで、澄み渡った青空のような爽快感を感じます。だからこんな時代だからこそ、底抜けに明るい物語を楽しんでいただければいいなとも思います」■「東出くんが長男、まさみちゃんが長女、僕が次男です(笑)」(小日向)――2018年に連続ドラマがスタートしましたが、本作で映画は3作目となりました。長澤「こんなに長い付き合いになると思わなかったですよね」東出「全然思わなかったです」小日向「足掛け5年ですから。映画化されてからさらにワーッと人気が広がりましたよね」――長く共演してきたなかで、改めてそれぞれをリスペクトしている面を教えてください。まずは長澤さんについて。小日向「東出くんも言ってましたが、ダー子がボクちゃんを騙す時の泣き芝居がすごいなと。本当に心から泣いているんです。もちろんそれは騙すためのテクニックですが、やはり演じるまさみちゃんのテンションは、毎回すごいと思います」東出「そうなんです。ダー子はキャラクターが立っているので、爆発力があるところがフィーチャーされがちですが、あの役は本当にお芝居がうまくて、多面的にいろいろなことができる人じゃないと成り立たない。だから長澤さんは、本当にお芝居が上手な方だなと思います」――では、東出さんについては、いかがですか?小日向「東出くんはいつも沈着冷静ですごく物知りです。物事をちゃんと噛み砕いて僕らに説明してくれるので、僕たちは『へえ!』といつも感心して聞いている感じですね。だから僕らの間では、お兄ちゃんみたいな存在です。東出くんが長男、まさみちゃんが長女、僕が次男です(笑)」長澤「確かにそうです。あと、芝居に対して実直なところでしょうか。たぶん東出さんは映画が好きなんです。時々、映画に対する真剣な想いを語ることもあります」小日向「役に対してストイックですよね。ほかの映画を観ても、すごく作り込んでいるなと感じます」――では、小日向さんの魅力はどんな点でしょうか?小日向「僕もいいこと、言ってよ(笑)」長澤「あはは(笑)。コヒさんは俳優のいいところを見つけるのがうまいです。新参者だろうが、長い付き合いだろうが、それぞれに光るものをちゃんと見つけて、そのよさをわかったうえで一緒にお芝居をしてくれます。お芝居で疑問に思うことはハッキリ言う方で、そういう厳しさもありますが、どんな人も受け入れられるところがすごいと思います」東出「お芝居はもちろん、普段の過ごし方でもそうですね。コヒさんがこれだけ明るくて包容力があるからこそ、僕たちもすごくやりやすくなっていると思いますし、現場が救われている部分があると思います。とてもありがたいことです」■「2本立てや3本立てを観たぐらいの満足感を得られる作品になってます」(長澤)――本当に毎回豪華キャストが参加されていますが、舞台挨拶や会見では、現場のいい雰囲気が伝わってきます。長澤「ほかの現場に行った時、俳優の先輩方が『コンフィデンスマンJP』を褒めてくださるし、自分も出たいと言ってくださることもすごくうれしいです。ファミリーがどんどん増えていくのが楽しいです」――しかも、毎回過去シリーズのキャストもたくさん登場されるので、いまや大所帯です。東出「そこが本当にすごいと思います」――今回、舞台がマルタ島という初のヨーロッパだったので、よりインターナショナルな作品になりましたね。長澤「海外の方にも楽しんでいただけるのではないかと。以前、上海映画祭に行った時、すごく熱烈なファンの方々がいてくださって、開催者のスタッフさんからも『チケットがすぐ売れ切れましたよ』と言われました。上映時には実際に皆さんが楽しんでくださっているのを肌で感じられたから、すごくうれしかったです。最近は配信もされているから、ぜひ多くの方に観ていただきたいです」――ファンの方はきっと次回作も楽しみにされていると思いますが。長澤「次回作をやるとしたらコロナが落ち着いてから、東京を舞台にした作品にして、海外の役者さんにも参加していただきたいです」小日向「次は3年後くらいかな?そしたら僕はもう70歳の古希(取材時67歳)で小日向じゃなくて“古希なた”だね(笑)」東出「コヒさんが古希なんて信じられないです」長澤「信じられない!でも、古希になっても、コヒさんはきっと全然変わらないですよ」小日向「いや、きっと『コンフィデンスマンJP』はこれからも続いていくと思うけど、そのころになったら、僕はもう静かに消えていくよ」長澤「いやいや(笑)。一体なんの話ですか!?」――小日向さんは『コンフィデンスマンJP』のムードメーカーなので不可欠な存在かと。小日向「僕はもっと渋くいこうと思うのにできなくて、番宣をやったあとでいつも自己嫌悪に陥るんですよ。はしゃぎすぎ、無理しちゃって!とか、年寄りの冷や水みたいに思われるのが嫌で」東出「いやいや、ないですから(笑)」長澤「無理無理!コヒさん、渋さの『し』の字もないですから(笑)。というか、むしろこっちの方がついていけなくてすいませんと恐縮しています(笑)」小日向「でも通常、僕はこんなにはしゃがないんです。いつも2人が笑ってくれるから、僕もうれしいなあと思いながらやっています」長澤「コヒさんが感情に正直な方だってことは、先輩俳優さんたちから聞いているので、そこは私も安心しています」――最後にこれから映画を観る方へのメッセージをお願いします。長澤「それぞれのキャラクターの存在感が際立っているので、1本の映画というよりは、2本立てや3本立てを観たぐらいの満足感を得られる作品になっています。古沢さんはどの役にも愛情を持って書いてくださっているので、誰が欠けても成立しない作品になっています。また、特に赤星さん(江口洋介)の動向にも注目してください」東出「エンドロールの最後まで、僕たちは頑張ってやっているので、最後まで席を立たないで観てもらえるとうれしいです」長澤「最後に可愛いシーンが待っています(笑)」小日向「そのとおり!また、最低2回は観てもらった方がいいし、2回観ればまた違った見方ができておもしろいと思いますので、ぜひ劇場で観てください」取材・文/山崎伸子