今さら、どう始めたらいいのか聞くのは恥ずかしい? 食卓で野菜と魚を育てることができる循環農業「アクアポニックス」のはじめかた。
夏野菜がおいしい季節はすぐそこ!いつも食べるフレッシュな野菜を、自分で育てたいと思ったことはありませんか?
とはいえ都内のアパートのベランダも狭くてやりにくいし、場所を借りたり手入れをしたりという作業を考えると、都会では難しいと感じてしまいます。
そこでご紹介するのが、以前からグリーンズでも紹介している「アクアポニックス」。完全循環型の農業で、魚と野菜を一緒に育てられるという仕組みです。
今回は、このアクアポニックスの「どこでも誰でもつくれる」という点に注目して、個人や小さなコミュニティでの「アクアポニックスのはじめかた」をご紹介していきます。
そもそもアクアポニックスとは何か。ネーミングは、Aquarium(魚の養殖)とHydroponics(水耕栽培)の合成語から来ています。
日本でアクアポニックスを広めている「おうち菜園」によると、
アクアポニックスとは、魚の排出物を微生物が分解し、植物がそれを栄養として吸収、浄化された水が再び魚の水槽へと戻る、生産性と環境配慮の両立ができる生産システムです。
つまり、最初にセッティングをすれば、あとは魚にエサをあげるだけで野菜も魚も育っていくということ。
様々なメリットがあるアクアポニックスですが、まとめると以下の3つのメリットがあります。
1. 難しい作業なしで、循環型のオーガニックな農業ができる2. 生態系の縮図を体感することができる3. どこでも誰でもはじめることができる実はこのアクアポニックス、新しい農業のカタチとは言え、ルーツは古代にあるのです。現代では水の少ない地域や土地の性質に関係なく、さらには都会でもできる環境に優しい農業として注目されています。
アクアポニックス最大の特徴は、場所や規模を問わないこと。大きな土地や農業機械、難しい知識を必要としていません。
はじめるために必要な4つの要素を見ていきましょう。
まずは、魚を育てるための水槽が必要です。
育てたい魚の数や野菜の量によって、水槽の大きさは変わってきます。樽や浴槽、食料を入れるコンテナなどの身の回りにあるものをリサイクルして使ってみましょう。
次に必要になるのが、野菜を栽培するための苗床です。こちらは水槽の大きさと同じくらいのコンテナで準備をします。水が漏れないようなつくりであれば、どんなコンテナでも使えます。
苗床のコンテナはひとつでも複数でもよく、大きなコミュニティの場合はひとつの大きな水槽の上に、いくつかの苗床を置くのが良いかもしれません。
出典元
苗床には、土の代わりになる素材を敷き詰めます。ハイドロボールのような粘土質の小石が特に使いやすく、根が育ちやすい環境に整えることができます。
このように、土の代わりに「ハイドロボール」を使うため土に棲みつく害虫も発生せず、無農薬で野菜を育てることができるのです。
この3つの装置は、アクアポニックスが循環するために重要なものです。自分で全て揃えるのにハードルを感じる時は、一般に販売されているキットを活用してはじめてみましょう。
ウォーターポンプは、水槽から苗床に水を送るための装置で、このポンプが水槽と苗床をつないています。スポンジはその水を一時的に溜めておき、根から排出された酸素と一緒に水槽に戻す役割があります。そして水溜めは、水槽の水位を保つために用意する装置です。水槽と苗床の間に設置し、行き来する水が溜まっていく仕組みになっています。
最後に必要なのが、育てる魚と野菜。どんな魚と野菜を育てることができるのか、気になりますよね。
【育てられる魚】淡水魚、特に水質変化や冬の低水温に強い金魚などが育てやすいそう。他にも、鯉やティラピアなどが育てられます。
【育てられる野菜】
なんと150種類以上もの野菜を育てられることがわかっていて、特にサニーレタスなどの葉物野菜やトマト、きゅうりなどが育てやすいのだとか。
他にも、・バジル・ミント・ローズマリー・えんどう豆・ケール・ブロッコリーなどなど、毎日の食卓に欠かせない多くの種類の野菜を育てることができます。どれを植えようか迷ってしまうほどですね。
このように、どんな家でも会社でも、どんな街にでもアクアポニックスは導入ができるのです。
そして場所だけでなく、参加者のハードルさえもなくしてしまうのが、アクアポニックスのいいところ。コミュニティの中にアクアポニックスがあれば誰もが参加者になることができ、子どもからお年寄りまで、魚と野菜の成長を楽しむことができます。
©Aqua Sprouts
自然とのつながりを感じにくい、都会での暮らし。
毎日の食事のほとんどはスーパーから来ており、食卓の上に広がるものと自分とは、全く違うサイクルで生きているようにも感じてしまいます。
でも本当は、私たちも自然の一部なはず。食卓の上で起こる小さな循環は、そんなことを気づかせてくれます。
どんな環境にも導入できるアクアポニックス、まずは「ここに置いてみよう!」と決めることから、はじめてみませんか?
[Via:permaculture.co.uk, 庭がなくても、子どもからお年寄りまで始められる家庭菜園。”さかなで野菜を育てる”アクアポニックスを広める「おうち菜園」]
(Text: 森野日菜子)