福島第一原発「処理水」海洋放出 最新装置とヒラメも飼育のナゼ
東京電力福島第一原発の「処理水」を大幅に薄めて海に放出する計画は、開始が約1年後に迫る。処理水の濃度をはかる作業では「スマートグラス」を導入し、効率化とミスの防止をめざす。さらに構内では、ヒラメなども飼育し、風評被害対策への強化をはかる。(社会部・松野壮志)
■原子炉建屋には「ガレキ」
2011年3月の原発事故から、まもなく11年。先月26日、私は東京電力福島第一原子力発電所の今を知るため、構内に取材に入りました。福島第一原発では、現在、1日約4000人の作業員が廃炉作業にあたっています。3号機の原子炉建屋の間近に行くと、建屋の中には、まだガレキが残されているのも見え、まるで当時から時間が止まっているかのような状況でした。
■1061基ものタンク
「処理水」をためる数多くのタンク
構内全体を見渡すと大変目立つのが大きなタンク。石油コンビナートを連想させるかのように、たくさんあります。実は、このタンクが今課題になっているのです。タンクの中に入っているのは「処理水」と呼ばれるもので、汚染された水を浄化したもの。タンクの数は1061基。これ以上、増設することは難しい上、来年の春には満杯になってしまうとの試算も出ているのです。
■「処理水」を海へ
増え続ける処理水を、今後どうすべきか。国は去年4月に、処理水を国の基準より大幅に薄めた上で海へ放出する計画を決定しました。計画では、濃度の基準を満たした処理水は、大量の海水と混ぜ合わせられます。薄める海水の割合は処理水の100倍以上。放出されるときの濃度は、国の基準の40分の1にあたる、1リットルあたり1500ベクレルを、さらに下回る濃度です。薄められた処理水は、放水立坑(ほうすいたてこう)と呼ばれる場所に送られて、濃度をはかった後、海に放出されます。
海底トンネル(イメージ図)
放出先は、沖合約1キロのところで、海底にトンネルを作り、そこを伝って海中に出すイメージです。海底のトンネルは、地下に道路などを作るときなどにも使用される「シールドマシン」で掘るという、とても大がかりな工事です。処理水の海洋への放出は、来年の春から約30年かけて行われる計画。長い期間を要するため、丈夫なトンネルが必要なのです。