“破綻と夜逃げ”の連鎖…鬼怒川温泉の廃ホテル不法侵入問題 観光庁が最大1億円の解体補助金も市の担当者「1億はちょっと厳しい」

鬼怒川温泉の廃墟ホテル問題

 “破綻と夜逃げ”の連鎖…鬼怒川温泉の廃ホテル不法侵入問題 観光庁が最大1億円の解体補助金も市の担当者「1億はちょっと厳しい」

「不法侵入を止めたい」 栃木県日光市役所総合政策課の小林岳英課長が苦しい胸の内を明かすように、栃木県の鬼怒川温泉街でいま、ある問題が深刻化している。それは廃墟ホテル不法侵入問題である。【映像】「廃ホテル」立ち入り検査で驚愕の実態 川沿いに立つホテルの外壁は至る所で剥がれ、天井も崩落。これらはバブル崩壊のあおりを受け、1990年代後半から2000年代にかけて倒産したホテルが放置され、廃墟化したものだ。 小林さんはこの問題点について「所有者が分かっていても、所有者の所在が分からない。倒産してから時間が経っているのもあるが、権利関係が複雑になっている」など指摘する。現在、鬼怒川温泉には4つの廃墟が10年以上放置され続けている。 最近になり、新たな問題も発生している。今月3日、廃ホテルに不法侵入した19歳から20歳の男女4人組が警察から厳重注意を受ける事態に。YouTubeに投稿された映像は、懐中電灯とカメラを片手に廃墟ホテルの中をリポートしながら散策する肝試し風の動画だ。日光市によると、このように廃墟ホテルの内部を無許可で撮影し、SNSに投稿するケースが後を絶たないという。

現状を明かす栃木県日光市役所総合政策課の小林岳英課長

 相次ぐ不法侵入を防ぐべく、日光市は先月になり初めて立ち入り検査を行った。そこには不法侵入にとどまらない驚くべき実態があった。「壁に落書きがしてあったり、日付が入って『いついつ来たよ』みたいなマーキングも。不法にゴミを捨てて行った状態が、ひどい状況で残っている」 小林さんによると、防塵マスクなどを着用して入った建物の内部は、むき出しのアスベストなど、キケンな状況だったという。 鬼怒川温泉街については、バブル崩壊の影響で地元の足利銀行が破綻。資金繰りに困った旅館の経営者が次々に夜逃げを繰り返した結果、現在のような廃ホテル放置という事態を生んだのだという。日光市は当時の所有者に撤去を求めるハガキを送付し続けているが、宛先不明、または破産管財人の解任などで連絡が取れないなど、いまだに所有者と連絡が取れない状況だという。 観光庁は「既存観光拠点の再生・高付加価値化推進事業」として廃墟などの解体1軒につき、最大1億円の補助を行うとしているが、小林さんは「ホテル1軒壊すのに、数億から十数億かかる。十数億円に対して1億円はちょっと厳しい。小さな自治体では解体すること自体が現状としては難しい状況にある」と根本的な原因を指摘した。また問題の廃墟は崖地に建っているため再開発が難しく、目的外とみなされ、補助金が下りない可能性も高いという。