秋田県新銘柄「サキホコレ」炊き分けコースを新搭載!米の産地×パナソニックの取り組み背景

多種多様な銘柄を誇る日本のお米。銘柄によって異なるおいしさを最大限に味わえるよう、パナソニック株式会社では2013年より炊飯器に銘柄炊き分けコースを搭載しました。

炊き分けられる銘柄米は年々増え、2021年11月現在、66銘柄に対応しています※。パナソニックの銘柄炊き分けの特徴は、すでに流通している銘柄米から選んで追加対応するだけではなく、銘柄米の開発段階から産地と一緒にコース開発をするケースがあることです。

特に、炊飯器のプログラム開発を担当しているPanasonic Cooking@Labのメンバーは米どころのコンテスト審査員を務めたり、銘柄米の開発にも携わったりするなど、幅広く米に関わりを持っています。そのため、新銘柄米のデビューと同時に専用コースの搭載が可能となっているのです。

そうした関わりを経て、新たにデビューした秋田県の新銘柄が「サキホコレ」です。

「サキホコレ」のデビューに合わせ、アプリと連携して本体をアップデートすることで追加できる「サキホコレコース」について、パナソニックで炊飯器マーケティングを担当する佐藤さん、Panasonic Cooking@Lab炊飯部の塚原さん、サキホコレの品種開発を担当した秋田県農業試験場の加藤さん、JA全農あきたの児玉さんにお話を伺いました。

銘柄によって異なるおいしさを、炊き分けによりもっと味わってもらいたい

――「サキホコレコース」が搭載された炊飯器について、特徴をお聞かせください。

佐藤:2021年6月に発売された炊飯器で、精米直後のお米でも、買い置きから時間が経って乾燥したお米でも、状態を見極めておいしく炊き分けられることが特徴です。

また、弊社のIoT対応調理家電と連携できる「キッチンポケット」アプリとの連携機能も追加しました。商品を買って終わりではなく、アプリを連携いただくことで、購入後も商品をアップデートしていただけるようになっています。

塚原:銘柄炊き分けコースは2013年から搭載されてきた機能です。銘柄炊き分けコース搭載のきっかけは、当時起こっていた米業界の変化が理由です。それまでの米業界は、コシヒカリ1強といっても過言ではない時代が長く続いてきたイメージがあるのですが、その頃から「ゆめぴりか」など新しい銘柄米が登場してきました。炊飯器の開発現場では、どの銘柄米でもコシヒカリのように粘りがあってやわらかいごはんに炊き上がるところを目指していたのですが、新銘柄米の登場で、世の中でコシヒカリとは異なるおいしさも受け入れられているなと感じられました。

実際に、お米は銘柄によってさまざまな個性や味わいがあり、多様なおいしさがあります。そうであれば、それぞれの銘柄米をおいしく食べられるよう、個性に合わせた炊き方がいいのではと考えたのです。お米の開発者側でも、新銘柄米を食べてもらうための活動が活発に行われるようになっていたため、弊社としてもいろいろなおいしさを味わえる取り組みを行いたいと思いました。

日本の米どころとして、産地を牽引する新しい顔を作りたかった

――今回、新たに銘柄炊き分けコースに搭載された「サキホコレ」の開発についてお聞かせください。

加藤:交配を始めたのは2010年、県の事業が本格的に試験をスタートしたのは2014年です。品種の選抜は徐々に系統を絞っていきます。サキホコレは800系統からスタートし、2017年に5系統、2018年に1系統に絞り込み、2020年度に品種登録を出願しました。

――新しい銘柄米を開発しようと思った理由や背景は何だったのでしょうか。

加藤:秋田米の競争力の向上と、夏の暑さにも対応できる品種を開発したいという2つの目的がありました。近年、さまざまな地域から極良食味のブランド米が出てきている中、秋田県は「極良食味の新品種開発」という意味では出遅れているところがありました。県として、コシヒカリを超える品種を育成して、競争力を上げたいという思いから、開発をスタートさせました。また、交配を始めた2010年ごろからは秋田でも暑い年が増えてきたため、極良食味で高温下でも玄米品質が良好な品種を作ることが急務でした。

――開発に当たり大変だった点はどこでしょうか。

加藤:極良食味の系統を選抜するのに、非常に苦労しました。交配数を増やしたため、これまでより沢山の食味試験を実施する必要がありました。そこで、これまでの一つの基準で3つを比較する4点法ではなく、一つの基準で9つを比較する10点法で食味試験を進めていきました。米だけではなく食べる側の人間にも統計処理による選抜を行い、食味試験の信頼性を高めました。

また、新品種開発の目的の一つである夏の暑さに耐えられる強い品種開発にも工夫が必要でした。わざと温水を掛け流し、熱帯夜の状況を作り出すことで、暑い夏でも玄米品質が低下しにくい系統を選抜していったのです。

――「サキホコレ」開発に当たり、パナソニックはどのような関わりを持っていたのでしょうか。

加藤:育種関係者には繋がりがあるため、パナソニックさんと新銘柄開発との前例については関係者からお聞きしていました。そのため、「サキホコレ」に関しても開発当初からパナソニックさんにアプローチしたいと思っていました。

佐藤:秋田県さんから事業部やマーケティング部に2019年産のサンプルをご提供いただいたのが最初でした。サンプルのお米を炊いて、感想をお伝えするという立場でしたね。

塚原:まだ「サキホコレ」という名前が決まる前のことでした。事業部で炊いてメンバーで食べたのですが、非常に素晴らしい出来で、そのおいしさに驚きましたね。

産地×パナソニック 銘柄炊き分けコース「サキホコレコース」開発秘話

――「サキホコレ」の特徴について教えてください。

加藤:炊飯器を開けた瞬間の白さとツヤが際立つお米です。召し上がっていただくと、程よい粘りと粒感を味わっていただけると思います。上品な香り、深い甘みも特徴です。炊き立てはもちろん、時間が経って冷めていくにつれ、より粒感や香りが際立つお米でもあります。時間経過による違いを感じていただける食べ方として、個人的には酢飯にしない手巻き寿司を試してみていただきたいですね。触感と食感によって「サキホコレ」の良さがわかると思います。

塚原:老若男女問わず、誰でも「おいしい」と言うお米なんじゃないかと思っています。全体的にまとまりがいいんですよ。炊き上がりの粒が大きく、見た目からおいしそうなお米ですね。

――そんな「サキホコレ」の良さを引き出すのが「サキホコレコース」ですが、こちらの開発はどういうきっかけで、いつから始められたのでしょうか。また、大変だった点はどこですか?

佐藤:開発中の「サキホコレ」のサンプルをいただいて社内で食べたときに、「このおいしさを知ってもらいたい」と盛り上がり、当社からアプローチしました。1年ほど前から取り組み始め、本格的にコースを作り始めたのが2020年冬ごろからですね。産地の方ともやり取りを密にさせていただいてきました。

塚原:専用コースを作るとき、まずは標準コースで炊いてみるのですが、「サキホコレ」はそれでも十分においしかったです。そこから、秋田県さんが理想とする炊き上がりをヒアリングし、ディスカッションをしながら検討を重ねていきました。大変だったのは、コロナ禍による影響ですね。一緒に食べながら話し合うことができないため、炊飯器を秋田県さんと全農さんにお送りして「このコースで炊いたときはどうですか」と遠隔でやり取りしなければなりませんでした。同じ場で食べていれば「粘りがもう少しあった方がいい、少ない方がいい」といったご要望を実感を持って理解することができますが、遠隔でのやり取りだと理想のゴールを共有することが難しくて。こちらでもゴールを想定しつつ、秋田県さんと徐々に作り上げていったという流れです。

加藤:こちらでも農場試験場に何十人も呼んで何度も試すことができないため、自宅に炊飯器を持ち帰っていろいろなコースで炊いて試し、ある程度自分のイメージを固めてから試験場で試しました。農業試験場の食味試験では、品種間の食味の違いをわかりやすくするためにやわらかく、粘りやすくなる圧力炊飯器を使用していません。圧力を使った炊き上がりに慣れていないので、「味や粘りは出ているけれど、やわらかすぎるのでは」という意見がありましたね。その後に修正を重ねていただいた結果、理想の炊き上がりに仕上がりました。

塚原:圧力をかけるとやわらかく炊けるので、そのようなご指摘が入るのも、ある程度予想していましたね。理想的なのは水の量で調整することですが、炊飯器の鍋に水位線を何本も入れることはできないため、水の量を変えずに理想とするごはんの硬さを実現するのが大変でした。圧力でもちもちに炊きながらも、ほどよい粘りに抑える調整が苦労したポイントですね。

 秋田県新銘柄「サキホコレ」炊き分けコースを新搭載!米の産地×パナソニックの取り組み背景

秋田県さんだけではなく、全農さんにも食べていただき、開発できたコースです。炊き上がりのおいしさ、口の中で感じられる粒感と粘り、上品な甘みを味わっていただけるコースに仕上げられたと思っています。

――「サキホコレコース」で炊いたサキホコレについて、ご感想をお聞かせください。

児玉:もちもちしていながらも粒感を感じられる炊き上がりで、甘み・粘りも十分に感じます。まさに「王道を極めたうまさ」を引き出してくれるコースですね。

加藤:水稲育種担当で使用している圧力なしの炊飯器に比べると「サキホコレ」の食味の特徴である柔らかさ、粘り、粒感、そして甘みがほどよく強調されています。口に入れた瞬間に違いがわかる炊き上がりとなっていました。まさに、「サキホコレ」専用と言えるのではないでしょうか。

新しい秋田のお米「サキホコレ」を産地と共に盛り上げたい

――あらためて、本取り組みについての振り返りやご感想、メッセージをお願いします。

佐藤:秋田県が県を挙げて開発した新銘柄米で一緒に取り組むことができてありがたく思っています。アプリ連携によりアップデートができる炊飯器だからこそ、「サキホコレ」発売のタイミングに合わせて、新コース搭載ができました。お客様にもタイムリーにお届けすることで楽しんでもらえる提案ができるのではないかと思っています。

塚原:新銘柄米が出てくるのは米業界の盛り上がりにも繋がり、とても喜ばしいことですし、その新銘柄米の専用炊き分けコースの開発ができてうれしいです。「サキホコレ」はおかずを選ばない、何にでも合うおいしいお米なので、お客様にはいろいろな楽しみ方をしていただきたいなと思っています。

加藤:生産者、県、パナソニックの3者が力を合わせることで、最高の「サキホコレ」を消費者の皆さんに食べていただけることに非常に心強さを感じています。この炊飯器では、生産年によって変わる出来栄えに応じてアプリを通じて炊き方を変えられるとも聞いています。引き続き連携しながら、よりおいしい「サキホコレ」を消費者の方々に届ける取り組みを継続していきたいですね。

児玉:2021年は生産者を限定し、80ヘクタールで作付けしました。10月上旬で刈り取りがほぼすべて終了し、消費者の皆さんの元へお届けできるよう、調製作業を進めている段階です。生産者一同、技術を駆使して新たな品種づくりも含め、秋田米のおいしさを届けるべく取り組んでいます。最終的に消費者の食卓にお米が届けられるとき、こうした生産者の想いも届けられたらうれしいですね。引き続き連携して取り組んでいくことが、生産者の励みにもなると思っています。

――パナソニックとして考える、今後の展開についてお聞かせください。

塚原:お米はお米だけでは成り立たず、ごはんにする工程を含めてお客様にお届けするものだと思っています。児玉さんからのお話にもあったように、私たちはお米の最後の段階である「消費者に届ける」部分を担っているという責任があります。今後も、より良い届け方を実現していくため、連携させていただければうれしいです。

佐藤:マーケティング部門としては、銘柄ごとに個性のあるおいしさを楽しんでいただけるご提案を引き続き行っていきたいと考えています。お米はおいしく楽しく、栄養価も高い食材です。そんな正しい情報も発信しつつ、新しい気づきを与えられる取り組みを続けたいですね。

「炊飯器にアプリって」と思われるお客様もいるかもしれませんが、新商品に買い替えずにタイムリーな対応が受けられるのはアプリならでは。おいしいごはんを食べたいという、お客様の気持ちやご要望に応えられるよう、今後も提案の幅を広げていきたいです。

※66銘柄のうち「サキホコレ」「ふさおとめ」「晴るる」コース追加には、本体とアプリのアップデートが必要です

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[本ストーリーの登場人物]

パナソニック キッチン空間事業部 調理機器BU

国内マーケティング部 炊飯器担当

国内での炊飯器マーケティングに携わる。

パナソニック キッチン空間事業部 調理機器BU

Panasonic Cooking @Lab 炊飯部メンバー

炊飯器のプログラミング開発に携わる。

秋田県農林水産部 農業試験場作物部主任研究員 水稲育種担当

秋田米新品種「サキホコレ」の品種開発を担当。

全国農業協同組合連合会秋田県本部米穀部 参与

「サキホコレ」および秋田県産米の生産指導全般に携わる。

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●炊飯器について

スチーム&可変圧力IHジャー炊飯器 SR-VSX1シリーズ

https://panasonic.jp/suihan/products/vsx1.html

銘柄炊き分け

https://panasonic.jp/suihan/21features/meigara.html

キッチンポケットアプリ連携

https://panasonic.jp/suihan/app.html

※11/5(金) 11:00より、キッチンポケットアプリより新銘柄(サキホコレ他)配信開始

●サキホコレについて

https://common3.pref.akita.lg.jp/akitamai/sakihokore/

※11/6(土)販売開始

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