条件を絞り込んで検索 事業全体の成長を加速。ルンバのサブスクは、日本特有の市場課題解決から始まった

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※本記事は、2022年2月25日刊行の定期誌『MarkeZine』74号に掲載したものです。

ロボット掃除機に対する不安を払拭する目的でサブスクサービスを開始

アイロボットジャパン合同会社執行役員マーケティング本部長 兼 新規事業開発室長 山田 毅(やまだ・たけし)氏

条件を絞り込んで検索 事業全体の成長を加速。ルンバのサブスクは、日本特有の市場課題解決から始まった

2001年松下電器産業(現・パナソニック)へ入社。デジタルカメラ「LUMIX」の営業・マーケティングに従事。2014年にソフトバンクモバイル(現・ソフトバンク)入社。人型ロボット「Pepper」やiPhoneのマーケティングコミュニケーションを担当する。2015年にiRobot Corporation入社し、2017年、アイロボットジャパン設立にともないマーケティング部長に就任。日本国内におけるiRobotのマーケティング戦略を担うほか、2020年10月からは新規事業領域の統括にも従事している。

――はじめに、ロボットスマートプラン(以下、ロボスマ)のサービス概要を教えて下さい。

ロボスマは、弊社が2019年から提供しているサブスクリプション型のサービスです。モデルによって料金は異なりますが、弊社が提供しているロボット掃除機「ルンバ」と床拭きロボット「ブラーバ」を月額980円から気軽にご使用いただけます。3年間サービスをご契約いただくと以降は自動的にお客様の所有物となるほか、返品も可能、さらに通常1年間のメーカー保証が3年間付いている、とお客様にとっては至れり尽くせりなサービスになっています。

――サブスクリプションサービスの開発・提供に至った背景は?

2000年に入り、ロボット掃除機の市場はグローバルで急速な成長を遂げてきました。特に、アメリカ、ヨーロッパ、中国では、非常に速いスピードでロボット掃除機の普及率が上がっています。そんな中、実は、日本はずっと普及率が伸び悩んでいるのです。その理由を分析してみると、日本ならではの背景が見えてきました。

ひとつは、「自分の手で掃除をしたい」「掃除は自分でしなければいけない」といった日本人特有のマインドセットが根強くあること。加えて、「ロボット掃除機で自分の家は掃除できないのではないか」と、ロボット掃除機に対する信頼度が低いこともわかりました。日本の家屋は欧米よりも小さいため、「そんなに小回りが利くのか?」「自分の家はロボット掃除機で掃除をするには小さすぎるのでは?」といった疑問を持たれているお客様も多かったのです。

決して安い買い物ではありませんので、高い初期投資費用が無駄になるようなことはしたくない、というお客様の心理はよくわかります。そこで、お客様のロボット掃除機に対する不安を払拭し、気軽にお試しいただけるサービスがあれば喜んでいただけるのではないか、と考えたのが最初の出発点です。

これは裏話になるのですが、実はリリースの直前まで、「長期レンタルプログラム」というサービス名称で事業化が進んでいました。ところが、2019年当時、突然「サブスク」という言葉が流行り始めましたよね。その時、自分たちのサービスもサブスクと言えるのでは? ということで、サブスクリプションサービスとして時代の潮流に合わせて売り出すことになりました。ですので、我々の場合、サブスクリプションのビジネスを立ち上げること自体が目的だったわけではなく、お客様の困りごとをどうにか解決できないかと考えた結果、こうしたサービスの形になったという流れでした。