スズキ バーグマン400試乗インプレッション【国産唯一の400ccビッグスクーター健在】
平成32年(令和2年)国内排ガス規制対応のためマイナーチェンジした、スズキの400ccクラス唯一のラインナップ「バーグマン400」。スタイリングはそのままに、ワンプッシュでエンジンが始動するイージースタートやトラクションコントロールが新採用された。国産車唯一の400ccビッグスクーターの実力に迫る。
●まとめ:ヤングマシン編集部(大屋雄一) ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:スズキ
[◯] 高速域で輝く基本性能。これぞ熟成の極みだ
国内初の400ccスクーターとして’98年に「スカイウェイブ」の名で登場。’17年のフルモデルチェンジの際に海外仕様と共通の呼称となった「バーグマン400」。251cc~400cc未満のスクーターとしては、トリシティ300やBMWのC400GT/Xなどがあるが、昔ながらの王道スタイルを貫いているという点では唯一無二の存在と言えよう。
まずはエンジンから。399ccの水冷単気筒は、ツインプラグ化や触媒の追加などによって最新の排ガス規制に対応。最高出力は31→29psへとダウンしたがビッグシングルのトルクはさすがで、遠心クラッチがつながる3000rpm付近から218kgもの車体を蹴り出すように加速させる。パワーウエイトレシオは最新の250ccスクーターと大差ないのだが、スロットルを開けてから加速に移行するまでのタイムラグが明らかに短く、さらに速度の上昇度も一枚上手だ。市街地でのストップ&ゴーでは耳に届く排気音や振動の多さが気になるものの、高速道路に入って100km/hまで速度を上げると状況が変わる。不快な振動が収斂し、良質なクルージングエンジンとしての顔を見せるのだ。
車体もその速度域にマッチしたもので、アンダーブラケットのみでインナーチューブを支持するユニットステアながらも剛性に対する不安は一切ない。また、初代スカイウェイブから継承されるリンク式のリヤサスペンションも奥でしっかりと踏ん張ってくれ、乗り心地の良さに貢献する。
取り回しはさすがに重いが、走り出してしまえば動きは軽く、しかも安定成分が高いのでUターンのような小回りも不安なく行える。フロントブレーキは、今や400ccクラスでは少数派となったダブルディスクを採用。強めのブレーキングを繰り返してもへこたれる様子はなく、ABSが作動したときのキックバックもスムーズで慌てることがない。
荷物をたくさん積んだりタンデムがメインの人には、このトルクの厚さは大きな魅力だろう。スズキはそうしたニーズのために、排ガス規制を通してまでこれを残したのだ。
【最新の排ガス規制対応。最高出力は31→29ps】399ccの水冷DOHC4バルブ単気筒は、ツインプラグ化やカムプロフィールの変更、16→10穴としたインジェクターの採用、触媒の追加(1→2個)採用により、最新の排ガス規制をクリア。 [写真タップで拡大]
ホイール径はフロント15インチ、リヤ13インチ。φ41mm正立式フォークは110mmのサスストロークを持ち、リンク式のリヤモノショックはプリロードを7段階に調整可能だ。 [写真タップで拡大]
スクリーンは高さ調整機構なし。メーターは基本デザインを踏襲しつつ航続可能距離や瞬間燃費計を追加。またトラコン新設に伴いインジケーターも追加。 [写真タップで拡大]
フロントボックスは右が3.5L(1.5kgまで)、左が2.8L(0.5kgまで)で、右側にDCソケットを設置する。左右ともキーロックがないので貴重品の取り扱いには注意。 [写真タップで拡大]
【メカニカルキーを継続採用】左にあるのはリヤホイールをロックするブレーキロックレバー。イグニッションキーは昔ながらの物理キーで、盗難抑止のためにシャッターやイモビライザーを採用している。 [写真タップで拡大]
足をゆったりと伸ばせるフロアボードは後方をスリム化することで足着き性に貢献。タンデムステップは可倒式で、足を踏ん張りやすい。 [写真タップで拡大]
【ヘルメットは2つ収納可】シートの中央にあるバックレストは、裏面にある固定ボルトの位置を変えることで前後3段階に調整可能。シート下の収納スペースは41Lで、フルフェイスとオープンフェイスが1個ずつ収納できる。 [写真タップで拡大]
[△] エレガントな見た目と単気筒とのミスマッチ
250ccスクーターよりも常用回転域が低く、しかも燃焼1発ごとの振動と音が大きい分、特に加減速の多い街中での印象はエレガントな見た目との乖離が大きい。加えて、私の座高だとスクリーンの高さが微妙に合わず、風切り音が気になった。
[こんな人におすすめ] 元祖にして無二。トルクの厚さは400ccならではだ
この新型でトラクションコントロールが追加されたが、最新の250ccスクーターはスマートキーや電動可変スクリーンを採用するモデルもあり、利便性で差を付けられている部分も。とはいえ、高速道路での余裕のある走りはやはり400ccならではだろう。
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