モノの貸し借りマッチング最適化プラットフォーム「Alice.style」開発のピーステックラボ、リコーリースとアスクルから3.5億円をシード調達
スタートアップのみならずスマホアプリをビジネスチャネルとして選択肢に加えることがごく当たり前の時代。マーケットが拡大すれば、当然それらをグロースさせるノウハウも蓄積が進むわけで、一定の勝ちパターンなるものも見えてきたーー
そんな話を聞いたので取材に行ってきた。訪問先は代々木に拠点を構える「Repro」だ。
Reproは2015年4月に公開のアプリの成長支援ツールで、2018年5月時点で世界59カ国、5000件以上に導入されている。ユーザーリテンションやファネルなどの定量分析、動画によるユーザー行動の定性的な分析などを通じて、アプリのインターフェースや体験性(UI/UX)を改善するポイントを教えてくれる。
プッシュ通知などのアプリ内マーケティングも提供されており、同社の説明では課金率を平均で20%改善させたり、1か月後のリテンションレートを35%改善するなどの実績を積み上げているという話だ。特にアプリは継続して利用してもらうことが大切なため、このリテンションレートの改善には力が入っているという。
このReproが講談社の漫画アプリ「コミックDAYS」に導入され、アプリ成長の支援を開始するということで、実際にどのような施策を実施したのか、同社代表取締役の平田祐介氏に話を聞いた。また、UI/UXを担当したグッドパッチ代表取締役の土屋尚史氏にも同席してもらった。
二人に話を聞く前に具体的な施策の内容を紐解いてみよう。もともと講談社の企画で始まった「コミックDAYS」は外部に開発のパートナーを求めていた。白羽の矢が立ったのがグッドパッチとはてなだ。それぞれアプリ担当、ウェブ担当という具合に役割を分担した。
土屋「もともと講談社さんが持っていた課題や企画アイデアの『骨子』に対して私たちがどうやったらビジネスモデルとして成立するのか、助言しながら組み立てていった感じです。初期の開発は昨年7月頃から着手して、実質半年ほどかかりました。漫画アプリと言っても課金もあれば広告もあるし、実際に市場に出してみないとどれが正解かなんてわからない」。
そしてこのアプリ部分の定量分析、改善を担ったのがReproになる。アプリストア最適化(ASO)支援とアプリマーケティング支援の両方を手がけており、それぞれ具体的な取り組みは次の通り。
これらの7項目を一気通貫で実施することでアプリユーザーの獲得から収益化までを継続的に改善し続けることが可能になる。指標を元にUI/UXの改善をグッドパッチが実施する。
土屋「リリース後に受けたユーザーのフィードバックを集め、課題に対してどういう優先順位をつけるのか、それはどのような判断軸で決定するのか、そういうルールを決める必要があるわけです。地道にやればいつかは改善していくと思います。けど、(単独でやれば)時間はかかるでしょうね」。
平田「アプリのUXってUI自体の話とプッシュのようなコミュニケーションの両方を高めないとグロースしません。その課題がどこにあってどういう方向性に向かえばいいか、これまでの知見からアドバイスはできます。一方でデザインそのものやUIの設計までやっていいよ、というクライアントの対応までお手伝いしたかった」
コミックDAYSの事例で両社は得意分野を分担することになった。
このように定量的な分析データに基づくPDCAが回ればある程度の施策や成長具合は見込めるようになるだろう。しかしそもそもPMF(市場最適化)してない、もしくはするかどうか分からない場合はどのように考えればいいだろうか?
平田「例えば事業会社の事業に関係ないものを出す、というのは全く無意味です。具体名は控えますが、使いにくい機能を満載にしたり、ウェブで十分なのにわざわざアプリで出すような体験は、結果的にブランドを毀損するので再考された方がいいです」。
平田氏は具体的に「1:本業のプロモーションにつながるもの、2:ECなど具体的に事業を再現するもの、3:顧客管理(CRM)を実現するもの、この3つ以外はシナジーが見込みにくい」としていた。土屋氏もこう指摘する。
土屋「(アプリ改善の)パフォーマンスを出せそうかな、ということは考えますね。特にマーケットは重要です。その企業がやろうとしている市場の『筋』はどうなのか。また担当者にちゃんと熱量があるか。こうこうこういう領域だからやらない、というのはないですが」。
また、KPIの設計についても平田氏は興味深い話をしてくれた。
平田「売上でいくのか、それともユーザー数でいくのか、それぞれに勝ちパターンがあるので、それに合わせて設計していくという感じですね。あと『何やりたいんですか?』みたいな質問ってしないんです。こうやった方がいいですよ、KGIとして設定する売上は数億なのか数十億なのか、そしてそれは現実味のある数字かどうか。こういうヒアリングを通じて売上目標まで作ってその数字を元に開発や改善のスケジュールを作るわけです」。
例えば出版社のビジネスモデルで大きいのはヒット作家を掘り当てることだったりする。じゃあ既存作品に課金するよりも、新人発掘をターゲットに幅広く集めるために無料にした方がいいーーといった具合だ。
話を聞いてみて、やはりアプリ成長の分野はまだまだ人手のかかる箇所が多い印象を受けた。特にビジネスモデルの紐解きや、KPIの設計などはコンサルティングの力を借りなければ決断できない。
平田「実際にサービスを作り、どうやってその世界を実現させるのか。それには売上なのか、購読なのか、作家を発見することなのか。こういうクライアントワークはなくならないですね。一方で売上の75%はReproのSaaSが稼いでくれてるので、事業としてはどんどん積み上がってるような状況になってます」。
今回、両社が取り組むアプリ成長の支援サービスは人とシステムをうまくハイブリッドした形になるのだろう。また実績が積み上がった段階でお伝えできればと思う。
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