ジープ・コンパス リミテッド(4WD/9AT)【試乗記】 これならうまくいく

現行のジープ・コンパスに接して驚くのは、エンジンフードを開けると「2.4L multiair」と赤く大書された、いや、エンボス処理された樹脂製カバーがまっさきに目に飛び込んでくることだ。「マルチエア」とは、言うまでもなくフィアット自慢のバルブコントロール機構のこと。コンパスの2.4リッター直列4気筒は、吸気側バルブの開閉タイミングを油圧で制御するヘッドメカニズムを搭載しているのである。

ジープ・コンパス リミテッド(4WD/9AT)【試乗記】 これならうまくいく

「クルマの魂はエンジンに宿る」といういささか古ぼけた概念から抜け出せない守旧派としては、「カバーくらい自社ブランドのモノに変えればいいのに」と感じてしまうが、ジープ・クライスラー陣営にはもはやそれだけの気力も残っていない……のではなく、むしろことさら隠す必要もないほど、フィアットとの協力関係がうまくいっているということだろう。コンパクトSUVたる「ジープ・レネゲート」と「フィアット500X」のつくり分けのうまさに舌を巻いたのは、それほど遠い過去のことではない。

初代コンパスのオーナーやオーナーだった方には申し訳ないけれど、2006年に登場した旧型は、いかにも急造された廉価モデルといった趣で、シャシーと上屋のバランスの悪さから、「ジープの着ぐるみをまとったFFハッチか!?」と悪感情を抱いたクルマ好きさえいた。ワタシです。

当時は自動車メーカーの合従連衡が盛んに論じられた時代で、ダイムラー・クライスラー+三菱の企業連合が開発したMKプラットフォームをベースに、ジープからはオンロード寄りのコンパス、よりワイルドな「パトリオット」がリリースされた。喧伝(けんでん)されていたシナジー効果が発揮されたわけだが、両者のキャラクターづけは、あまり実質の伴わない、マーケティング主導のすみ分けといった色合いが強かったように思う。パトリオットはその後日本市場からは姿を消したが、コンパスはトップモデルたる「グランドチェロキー」を模したスタイルを手に入れて、シティー派クロスオーバーの個性を明確にした。

「コンパス」のフロントに搭載される2.4リッター「マルチエア」エンジン。パワーユニットは全グレード共通で、最高出力175PS、最大トルク229N・mを発生する。
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マイナーチェンジを機に、「コンパス」のヘッドランプはデイタイムランニングライトを内蔵するLED式となった。
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最上級グレード「リミテッド」の18インチアルミホイール。他グレードのサイズは16インチまたは17インチとなる。
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リアコンビランプも新たなデザインのLED式ランプに変更されている。
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上級SUV「グランドチェロキー」を思わせるたたずまいの「コンパス」。ボディーカラーはグレー(写真)のほか、レッド、ホワイト、ブラック系の3色が選べる。
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