BMW iX xDrive50(4WD)【試乗記】 エンジン屋の誇り

ひとことで言うなれば、iXはBMWの電動車においてフラッグシップとなるピュアEV。塊感を強調するようなボディーフォルムに、縦に伸ばされた大型のグリルや薄型のヘッドランプとリアコンビネーションランプ、無駄なラインを省いたサイドパネルなどが組み合わされたエクステリアデザインはまさに最新のBMW流儀であり、クルマ好きが目にすればどこからどう眺めてもBMWである。

BMW iX xDrive50(4WD)【試乗記】 エンジン屋の誇り

比較対象物がなければその大きさはわかりづらいが、全長×全幅×全高=4953×1967×1695mmというボディーサイズは、BMWのSUV「X5」とほぼ同等のフットプリント。全高がやや低いので幾分スマートにも見える。大きさそのものでステータスを示す時代は過去のもので、フラッグシップEVとはいえ圧倒するようなサイズ感や外連味(けれんみ)は控えられている。フロントフェイスの面積に対して大きすぎるグリルが最近のBMWでは何かと話題に上るが、すでに「M4」や「M3」で慣らされていたためか、いまさら取り立ててどうこう言いたくなるようなものでもない。

外から眺めたときにボディーサイズが瞬時に理解できなかったのは、今回の試乗車に装着されていた22インチホイールが、ことのほか存在感を主張していたからかもしれない。ボディー後方に向かってグリーンハウスの下部が上昇カーブを描き、これに加えてボディー下部をブラックで処理したサイドビューは、外板色にかかわらずボディー上下方向の厚みを視覚的に抑える効果をもたらす。

こうしたデザイン上のテクニックは「ランボルギーニ・ウルス」でも用いられていおり、大きく重々しく感じるSUVのルックスに、軽快感や躍動感をプラスしている。もちろん、実際には2tをはるかに超えるヘビー級であり、SUVとしての質量も十分だ。けれどもそうは感じられないどこか鍛え抜かれたアスリートのようなボディーシェイプは、これまでのBMW車の延長上にありながらも、新しい時代の訪れを印象づける。参考までに空気抵抗の指標となるCd値は0.25と発表されている。

2021年11月に発表されたBMWのピュアEV「iX」。プラットフォームや外装、パワートレインなどはゼロから開発された新型車で、エクステリアデザインは次世代BMW車の指針となるものだという。
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日本に導入される「iX」には、出力と航続距離が異なる2モデルをラインナップ。今回は523PSのシステム最高出力と、一充電あたり650kmの航続距離を誇る上級モデル「xDrive50」に試乗した。
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内燃機関を搭載する車両とは異なり、フロントグリルは完全にふさがれている。日本導入車両には「BMW Individualチタニウムブロンズエクステリアライン」が標準で装備されており、キドニーグリル内やフロントバンパーのインサートなどがチタニウムブロンズ色となる。
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「iX xDrive50」の電動パワートレインは最大150kWの急速充電に対応。同急速充電器を使えば40分以内で約80%までの充電が完了し、約500kmの走行が可能になるというが、日本に150kWの急速充電器はまだ導入されていない。
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