空調設備の基礎知識
空調設備は、建物内の温熱環境・空気環境を調節するための設備です。人間の活動が主となるオフィスや、品質管理が求められる生産工場、クリーンルームなど、その制御対象は多岐にわたります。省エネルギー化や執務環境向上への要求などが高まる中、近年ではさまざまな種類の設備が登場し、システムも複雑になっています。本連載では、空調設備の基礎知識について、代表的な方式や構成機器、近年の動向や維持管理などを解説していきます。第1回では、空調設備とは何か、その種類や計画・設計手順、冷暖房の考え方などを解説します。
もくじ
第1回:空調設備とは
1. 空調設備とは
空調設備(空気調和設備)とは、建物空間の空気の温度・湿度・気流速度・清浄度(二酸化炭素・粉じん・臭気など)・圧力を、その利用目的に応じて調節する設備です。その対象と目的によって、保健用空調設備(以下、保健空調設備)と産業用空調設備(以下、産業空調設備)に大別されます。
2. 保健空調設備
保健空調とは、オフィスで仕事をしている時に行う冷房・暖房や換気など、その空間に在室する人の快適性や健康の維持を目的に行う空調です。一般に空調といえば、こちらの保健空調を思い浮かべると思います。一定の条件を満たす施設(百貨店、図書館、美術館、博物館、事務所、旅館、学校などに使用される建築物で、主に延床面積が3,000m2以上のもの。学校では8,000m2以上)では、建築物における衛生的環境の確保に関する法律(建築物衛生法)により、保健空調の実施時に表1に示す基準が定められており、この基準を満たすような運用が公衆衛生向上のために求められています。ただし、換気設備のみが設置されている場合は、温度と相対湿度は適用外となります。
表1:建築物環境衛生管理基準における室内空気環境の基準(厚生労働省ウェブサイト、建築物環境衛生管理基準について、https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei10/を参考に作成)項目 | 管理基準値 | 備考 |
---|---|---|
温度 | 17°C~28°C | |
相対湿度 | 40%~70% | 機械換気設備のみを設置している場合は適用外 |
気流 | 0.5m/s以下 | |
二酸化炭素 | 1,000ppm (100万分の1,000)以下 | |
一酸化炭素 | 10ppm (100万分の10)以下 | 外気が既に10ppm以上ある場合は20ppm以下 |
浮遊粉じん | 0.15mg/m3以下 | |
ホルムアルデヒド | 0.1mg/m3以下 | 新築、大規模修繕または大規模模様替え後の最初のからまでの期間内 |
在室する人たちが健康で快適に過ごせるための室内環境を調整することが、保健空調の役割です。近年では、オフィスなどで知的生産性(プロダクティビティ)向上のための快適な空間が求められている一方で、……
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3. 産業空調設備
産業空調とは、精密機器工場のクリーンルームなど、産業用途に用いられている空調をいいます。近年の機械製品は、非常に精密な部品などで作られています。これらを製造する過程では、厳密な温度・湿度の管理と、極めて清浄な空気環境が求められます。また、工場で作業する人たちはその労働量に比例して代謝量も多くなり、夏季などはとても暑くなるため、空調によって適切な環境を維持する必要があります。このように、産業空調は、……
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4. 空調設備の計画と設計手順
一般に、空調設備の計画・設計は、図1に示すように、企画、基本計画、基本設計、実施設計の流れで行われます。
図1:空調設備の計画・設計手順・企画
企画は、建物や予算規模などを決定していく段階で、建築の計画が主となります。それに加え、近年では地球環境問題や省エネルギー化、快適な室内環境形成への意識の高まりを受けて、この時点から平面計画などとともに環境設備的手法を考えていく必要があります。
・基本計画
基本計画の段階では、対象である空間に対して、目標とする温熱環境・空気環境の程度を想定し、どのような空調方式(対流式、放射式など)で制御を行うか、また、その範囲はどの程度までとし、何台で分担するかなどを決めていきます。最近では、建物の利用開始後に利用空間の用途・レイアウトの変更が必要となる場合もあり、空調設備機器の移動や設置なども、これらに対応できるように自由度を持たせた計画が必要とされています。
・基本設計
基本設計の段階において、夏季や冬季の概略熱負荷計算を実施し、……
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5. 冷暖房の考え方と熱負荷計算
熱負荷とは、所定の温度を保つとき必要とする熱量、水分の総量をいい、熱負荷計算とは、それぞれの目的にあった空調を実現するために必要な熱負荷を計算することをいいます。夏季は、温度差や日射により、外壁や屋根、窓などを介して、熱が外部から室内へ入ります。さらに、換気によって外気を取り入れることで、熱も同時に入ってきます。また、室内の照明やさまざまな機器からの発熱、在室者そのものからの発熱などによっても、室内に熱が溜(た)まっていきます。これらも熱負荷の一つです。熱には、室温変化に影響する顕熱と、室内湿度変化に影響する潜熱があります。
これらの熱が室内に溜まることによる室温と室内湿度の上昇を防ぎ、一定の温湿度を維持するため、……
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第2回:空調設備の種類
前回、空調設備は対象と目的によって、保健用空調設備と産業用空調設備に分類されることを示しました。今回は、空調設備の設置方法や吹き出し方法の違いによる分類について説明します。また、空調するエリアを区分けする代表的なゾーニング手法や、それぞれの空調方式における特徴などについても解説します。
1. 設置方法による分類とゾーニング
空調対象となるエリアを区分けすることをゾーニングといいます。代表的なゾーニングとして、1階・2階に店舗が入り、3階以上はオフィスとなるような階別(用途別)のゾーニングや、部屋の中央付近と外壁付近に区分けする方位別のゾーニングがあります。
方位別ゾーニングの場合、外壁や窓から5m程度までの空間をペリメータゾーン、その室内側の空間をインテリアゾーンと呼びます(図1)。ペリメータゾーンは室外に近いため、外気の影響を大きく受けます。夏は日射熱などによって、冬は熱損失によって、インテリアゾーンよりも暑くなったり寒くなったりするため、インテリアゾーンとペリメータゾーンを同じ空調機で同時に冷暖房することが難しい場合が生じます。空調の設計の際には、このインテリアゾーンとペリメータゾーンをどのように空調するか検討する必要があります。
図1:ペリメータゾーン、インテリアゾーンその他、空調設備は、機器の設置方法によって大きく2種類に分けられます。1つは、中央空調(セントラル)方式といい、……
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2. 中央空調方式
中央空調方式は、中央機械室に大型の空調機などをまとめて設置します。機械室は通常、大きな機器の搬入出がしやすいように、1階や地下1階などに設けられることが多くなります。地下に機械室を設けた場合は、ドライエリアと呼ばれる空間を外壁の横に設けると、修理や交換のために屋外からアクセスしやすくなります(図2)。
図2:ドライエリア中央空調方式の代表的なシステムとして、単一ダクト方式があります。単一ダクト方式とは、空調機で熱を与えて温度を高くした空気や、熱を除去して温度を低くした空気をダクト経由で一括して各室に送り、各室からの空気をまとめて空調機に返す方式です。ダクトとは、空調設備の一つで、気体を運ぶ管のことをいいます。中央空調方式では、外気を空調機にまとめて取り込み、その外気を各室に送風するため、冷暖房と換気の両方を同時に行うことができます。単一ダクト方式には、定風量単一ダクト方式と変風量単一ダクト方式があります。
・定風量単一ダクト方式
定風量単一ダクト方式は、CAV(Constant Air Volume)方式ともいいます。図3のように、空調機から各室へ同じ風量・温湿度の空気を送ります。基本的に、部屋ごとの温湿度は設定できません。また、風量が固定であるため、冷房を強くしたい時は空調機で空気温度を低くする必要があります。この方式は、稼働する機器が比較的少ないためにメンテナンスが容易なことと、各室に送られる風量に一定の外気が含まれているため、室内の空気質が良好に保たれるというメリットがあります。一方、熱負荷が小さく、……
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3. 個別空調方式
中央空調方式は、機械室に空調機などの機器をまとめて設置するのに対し、個別空調方式は、各室に天井埋め込みカセット型エアコンのような小型の空調機を設置し、各室や各ゾーンでの空調の発停や温度調節を可能とした方式です。住宅の各室に設置されているエアコンのようなイメージです。住宅のエアコンでは、室内機と室外機をそれぞれ1台ずつ配管で接続している一方、近年のオフィスビルなどでは、図5のように、1台の大きな屋外機に対して複数の室内機を接続するビル用マルチエアコンを採用する例が増加しています。
図5:ビル用マルチエアコンこの場合、冷房時には室内機で室内空気の熱を除去し、配管内の冷媒がその熱を屋外機まで運んで外気と熱交換を行うシステムが代表的な方法となります。個別空調方式は、……
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第3回:中央空調方式について
前回は、空調設備の設置方法や吹出方法の違いによる分類、各空調方式の特徴・ゾーニングの手法などについて示しました。今回は、中央空調方式を構成する主要な機器を、熱の流れとともに解説します。
1. 中央空調方式の熱の流れ
中央空調方式は、主に空調機・冷凍機・冷却塔・ボイラなどで構成されています(図1)。冷房の場合、室内に溜まった熱で温められた空気を、ダクトを介して空調機に送ります。この時、換気のために一部の室内空気を屋外に排気します。空調機に送られた空気は、熱交換器(冷却コイル)で冷水によって冷やされ、温湿度が低くなった状態で室内に送られます。暖房の場合は、温度が低い室内の空気を冷房時と同様にダクトを介して空調機に送り、空調機の熱交換器(加熱コイル)で高温の蒸気などにより温められて、室内へと送られます。
図1:中央空調方式の例2. 中央空調方式を構成する主要な機器
ここでは、中央空調方式の主要な機器である、空調機・冷凍機・冷却塔について解説します。
・空調機
中央空調方式では、中央機械室にAHU(Air Handling Unit)とも呼ばれる大型の空調機を設置します。図1のように、空調機では室内から熱を運んできた空気と換気のための外気を入口で混合し、まずフィルタで汚染物質を除去します。その後、熱交換器(冷却コイルと加熱コイル)において、冷房時には冷却コイルを流れる冷水により空気が冷却除湿されます。空気と熱交換することで温度が上がった冷水は冷凍機で冷却され、再び空調機の冷却コイルへと送られます。暖房時には、加熱コイルを流れる蒸気などで空気が加熱されます。蒸気は空気と熱交換をすることで水になります。この水がボイラで加熱されて蒸気となり、再び空調機の加熱コイルへと送られます。空気は加熱コイルを通過した後に、加湿器で加湿されます。冷却除湿、もしくは加熱加湿された空気は、ファンによりダクトを介して各室へと送られます。
・冷凍機
冷凍機は、冷却コイルで空気と熱交換することで温度が上がった冷水を、再度冷却します。液体が蒸発する際に周囲から吸熱する作用を利用して、冷水から熱を奪います。この蒸発する液体を冷媒といいます。冷凍機内では、冷媒の相変化により熱を移動させています。冷凍機には、圧縮式冷凍機と吸収式冷凍機があります。
圧縮式冷凍機:
圧縮式冷凍機は、図2のように蒸発器・圧縮機・凝縮器・膨張弁で構成されています。空調機の冷却コイルで温度が上がった冷水は、最初に蒸発器に入ります。ここで、フロンなどの冷媒を冷水の熱により蒸発させることで、冷水から冷媒に熱を移動します。温度が下がった冷水は、再び空調機の冷却コイルへ向かいます。蒸発した低温低圧の気体である冷媒は、圧縮機で圧縮されることで高温高圧の気体となり、凝縮器へ移動します。凝縮器では、屋上などに設置されている冷却塔との間で冷却水を循環させています。
図2:圧縮式冷凍機の冷凍サイクル高温高圧の気体となった冷媒は、常温の冷却水で冷却されることで熱を冷却水へ移し、水へと相変化します。温度が上がった冷却水は冷却塔へ向かい、大気に熱を放出します。高圧の液体となった冷媒は、膨張弁で減圧されて低圧の液体となり、再び蒸発器に向かい蒸発作用で冷水を冷却します。圧縮式冷凍機は、圧縮機を用いるために音や振動が大きくなり、……
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第4回:個別空調方式について
前回は、中央空調方式を構成する冷凍機や冷却塔などについて示しました。今回は、個別空調方式を構成する主要な機器を解説していきます。
1. 個別空調方式の熱の流れ
個別空調方式は、各室に天井埋め込みカセット型エアコンのような小型の空調機を設置し、各室や各ゾーンでの空調の発停・温度調節を可能とした方式です(第2回)。住宅の各室に設置されているエアコンのようなイメージです。住宅のエアコンは、1台の室内機と1台の屋外機が配管で接続されています。
近年のオフィスビルなどでは、図1のように、1台の大きな屋外機に対して、複数の室内機を接続するビル用マルチエアコンが採用される例が増加しています。ビル用マルチエアコンは、冷房時には室内機で室内空気の熱を除去し、……
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2. ヒートポンプ式空調機の仕組み
ヒートポンプとは、空気中の熱を集め、くみ上げて移動させる構造です。気体は圧縮すると温度が上昇し、膨張させると温度が下がります。その性質を利用し、冷媒を圧縮したり膨張させたりして温度を上昇・低下させ、熱を移動させることができます。個別空調方式の代表的なビル用マルチエアコンでは、主にヒートポンプという技術を利用して熱を運んでいます。熱は温度の高いところから低いところへ向かって流れるため、温度の低いところから高いところへ熱を運ぶためにはヒートポンプが必要となります。
現在は、圧縮式冷凍機の原理を用いた圧縮式ヒートポンプが最も普及しています。圧縮式冷凍機では、蒸発・圧縮・凝縮・膨張の冷凍サイクルが1台の冷凍機の中で行われます(第3回)。また、空調機内の冷却コイルで空気と熱交換することで温度が上がった冷水から熱を奪い、冷水の温度を下げています。
一方、ヒートポンプ空調機は、冷凍サイクルを、室内機と屋外機に分けて行っています(図2)。また、室内空気から熱を奪うことで、空気の温度を下げています。ここでは、ビル用マルチエアコンを例に、ヒートポンプ式空調機について説明します。
図2:ヒートポンプの熱の流れ(冷房時)・冷房時におけるヒートポンプの熱の流れ
図2をもとに、冷房時の熱の流れを見ていきましょう。夏季、温度が上がった室内空気を、室内機の蒸発器に取り込みます。蒸発器では、室内空気の熱によってフロン系の冷媒が蒸発します。熱を奪われて温度が低くなった空気は、室内機の吹き出し口から室内へ吹き出されます。蒸発した冷媒は、配管を通って屋上などに設置されている屋外機へと移動し、圧縮機で高温高圧の気体に圧縮されます。その後、ファンによって屋外空気にさらされることで気体の冷媒は冷やされ、液体へと凝縮します。このとき、……
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3. 換気の方式と種類
前述したように、個別空調方式では、空気は室内と室内機との間を循環しているため、室内の空気質を良好に保つためには換気設備を設置する必要があります。換気方式にはファンを用いた機械換気と、風力や温度差を利用した自然換気があります。機械換気は、ファンの設置方法によって第1種~3種の3つに分類できます(図4)。
図4:換気方式の種類以下では、機械換気方式について説明します。
・第1種換気方式
第1種換気方式は、室内への給気と、屋外への排気の両方をファンで行う方式で、最も確実に給排気ができます。給気ファンと排気ファンの量を調整することで、室内の圧力を任意に調整することが可能です。空気は圧力の高いところから低いところへ移動するため、室内圧力を高く(正圧に)することで、周辺からの空気の流入を防ぐことができます。
・第2種換気方式
第2種換気方式は、室内への給気はファンで行い、屋外への排気は排気口から自然に行う方式です。室内に、強制的に空気を送り込むため、室内は正圧になります。周辺よりも室内空気の圧力が高いため、排気口からは自然に空気が流出していきます。部屋の扉が開放されても、室内から外に空気が出て行くので、室内の清浄度を高く保ちたい部屋に用いられます。
・第3種換気方式
第3種換気方式は、……
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第5回:空調図面について
前回は、個別空調方式を構成する主要な機器であるヒートポンプ式空調機や、換気設備などについて示しました。今回は、空調設備の図面の種類や、図面中の表示記号を紹介していきます。
1. 空調設備の図面
空調設備を設計施工する際には、多くの図面を作成します。連載第1回で解説したように、空調設備の基本設計を行う段階で作成される図面を基本設計図といいます。基本設計図は設備の概略を示すもので、ダクト・配管のおおよそのルートや、主要な設備機器を図面上に記載します。その後、実施設計の段階において、各種設備機器に必要な能力や、ダクト・配管のサイズなどを計算し、その詳細を図面に記載します。この段階で作成される図面を実施設計図といいます(表1)。実施設計図では多くの図面を作成します。その代表的なものを以下に紹介します。
表1:主な実施設計図主な記載内容 | 実施設計図名称 | |
---|---|---|
ダクト・配管 | 空調設備系統図 | 空調設備平面図 |
ダクト | 空調設備ダクト系統図 | 空調設備ダクト平面図 |
配管 | 空調設備配管系統図 | 空調設備配管平面図 |
・空調設備系統図
空調設備系統図は、空調設備機器とダクト・配管類が、建物内でどのように接続されているのかが分かるよう、全体の構成を1枚の図面に記載したものです。
空調設備ダクト系統図は、空気が流れるダクトと、空調設備機器の構成・接続状況を表した図面です。中央空調方式であれば、1台の空調機(AHU:熱源から供給される温水や冷水の熱交換器)からダクトを介して空気が循環する経路などが分かるようになっています。また、空調設備配管系統図は、水や蒸気・冷媒が流れる配管と、空調設備機器の構成・接続状況を表した図面です。個別空調方式でれば、1台の屋外機に対する複数台の室内機との接続状況などが分かるようになっています。
・空調設備平面図
空調設備平面図は、各階に設置されるダクト・配管・空調設備機器を平面図で表したものです。平面図は、天井から見下ろした形で記載しています。
空調設備ダクト平面図は、……
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2. 空調設備系統図の例
空調設備系統図において、ここでは個別空調方式の配管系統図の例を紹介します。図1は、屋上に設置されている1台の屋外機に、複数台の室内機が冷媒管で接続されている例です。遠くに設置されている室内機から冷媒管が集約されながら、屋外機へと接続されていることが分かります。
図1:個別空調方式の空調設備配管系統図の例線の途中に記載されている文字が配管の種類を表し、Rは……
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3. 空調設備平面図の例
空調設備系統図において、ここでは個別空調方式の配管系統図の例を紹介します。図1は、屋上に設置されている1台の屋外機に、複数台の室内機が冷媒管で接続されている例です。遠くに設置されている室内機から冷媒管が集約されながら、屋外機へと接続されていることが分かります。
図2:空調設備ダクト平面図の例図2の上側は、下階から立ち上がってきた給気ダクト(左端に記載)から該当フロアに角ダクトが分岐し、壁付き吹き出し口と天井付き吹き出し口から部屋に給気されていることを示します。角ダクトは、寸法がmmの単位で記載されています。実施設計図では、設備機器やダクトも建築図の縮尺に合わせて記載するため、細いダクトの場合、単線で描かれることもあります。
図2の下側には、……
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第6回:特殊な空調設備について
前回は、空調設備の図面の種類や、図面中の表示記号を紹介しました。今回は、特殊な空調設備について説明していきます。
1. 蓄熱式空調設備
蓄熱式空調設備とは、建物を空調している日中の時間帯に加え、エネルギー需要が少ない夜間にヒートポンプを稼働させて、冷水、氷、湯などで熱エネルギーを蓄えておき、日中に使用する設備のことをいいます。蓄熱式空調設備は、熱を製造する冷凍機などの熱源機と、熱を消費する二次側の空調機が、蓄熱層を介することで別々に切り離された開放回路方式となっています。
第3回、第5回で説明したAHUを用いた空調方式では、冷却コイルで空気と熱交換することにより温度が上がった冷水が、すぐに冷凍機に送られ冷却された後、再び空調機の冷却コイルへと送られます。このように、一般的な空調方式は、冷凍機などの熱源機と二次側の空調機とが配管によって直結された密閉回路方式で形成されており、冷凍機での熱の製造(冷却水の冷却も含む)と、空調機での熱の消費が同時に行われています。夏季の気温が高い日には、日中、多くの建物でこの現象が同時に発生するため、冷凍機での冷却に多くの電力が用いられることになります。これに対し、蓄熱式空調設備は、熱の製造と消費を同時に行わない特殊な空調方式として利用が進んでいます。
図1を用いて、蓄熱式空調設備の冷房時を例に解説します。空調機の冷却コイルで空気から熱を奪い温度が上がった冷水は、日中は蓄熱層に運ばれます(a)。蓄熱層に溜まった冷水は、夜間に冷凍機を用いて冷却され(b)、蓄熱層に溜(た)められます(d)。日中は、夜間に冷却された冷水を空調機に送り(c)、冷却コイルで空気を冷やします。このサイクルを繰り返すことで、熱の製造と消費をリアルタイムで行う必要がなくなり、都合の良い時間帯に熱を製造し蓄えておくことが可能になります。
図1:蓄熱式空調設備(冷房時)図2は、ピークシフトを示します。ピークシフトは、夜間から早朝にかけて蓄えた熱を、日中の空調時間の全域において一定の割合で利用し、日中の空調電力をシフトする運転パターンのことをいいます。
図2:ピークシフトまた、図3は、ピークカットを示します。ピークカットは、……
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2. 地域冷暖房システム
地域冷暖房とは、地域の1か所、または数か所の熱供給プラントで冷水や温水などの熱媒体をつくり、これらを一定地域内の複数の建物に供給して冷暖房や給湯を行う方式のことをいいます。地域熱供給とも呼ばれています。
一般的な建築物における空調設備では、それぞれの建物内に機械室を設けて熱源機などを設置したり、屋上などに屋外機を設置したりします(図4)。これらは、建物ごとに設置・管理を行うため、必ずしも効率良く機器を運転できるわけではありません。また、ピークの需要に対応した設備を建物ごとに設置するため、地域全体の需要に対して過大な設備となりがちです。さらに、機械室や屋上の機器設置スペースなど、建物ごとに多くの設置面積が必要となります。
図4:一般的な建築物における空調設備一方、地域冷暖房では、……
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第7回:空調設備と省エネルギー
前回は、特殊な空調設備について紹介しました。今回は、空調設備と省エネルギーについて説明していきます。
1. 省エネルギーに関する基準
現在、一定規模以上の非住宅建築物を新築・増改築する際には、2015年7月に制定された「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)」に適合する必要があります。この省エネ性能の評価には、一次エネルギー消費量基準BEI(Building Energy Index)と、外皮基準PAL*(Perimeter Annual Load)が用いられます。
・一次エネルギー消費量基準BEI
BEIは、以下の式で表すことができます。1.0以下で省エネ基準を達成していることになり、数値が小さいほど省エネルギー性能が高いことを示します。
設計一次エネルギー消費量とは、評価対象の建築物に、設計仕様の設備を導入した際にかかる一次エネルギー消費量のことであり、空調設備もこれに含まれます。基準一次エネルギー消費量とは、……
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2. ペリメータレス空調
ぺリメータレス空調とは、ぺリメータゾーンにおける外部からの影響を解消する目的で作られた空調設備のことです。ぺリメータゾーンとは、外壁や窓から5m程度までの空間です(第2回)。ペリメータゾーンは、日射などにより熱負荷が大きくなるため、専用の空調機を設置することがあります。そのため、システムが複雑化し、配管などの通過経路も大きく確保する必要が出てきます。その点、ペリメータレス空調は、窓周辺を工夫するだけでその熱負荷を減らすことができます。ここでは、代表的な手法であるエアフローウインドウを紹介します。
エアフローウインドウとは、窓を二重化することで日射熱などの侵入熱を2枚の窓ガラスの間にいったん封じ込め、そこに室内から空調機に送る還気を流す空調方式です(図1)。窓ガラスの間に溜(た)められた熱は、還気と一緒に空調機に送られる(もしくは排気される)ため、室内への熱の侵入を軽減することができます。
図1:エアフローウインドウ3. 自動制御設備
空調設備において、省エネルギーと快適性を両立させるためには、自動制御設備が必須のものとなっています。熱負荷に応じて搬送空気の量を調節する変風量単一ダクト(VAV)方式はその代表的なもので、第2回で紹介したとおりです。ここでは、空気の量ではなく、水の量を変化させる変水量(VWV:Variable Water Volume)方式と、水の量を一定にして行う定水量(CWV:Constant Water Volume)方式を紹介します。
空調機なのに水? と思うかもしれませんが、思い出してみてください。AHU(Air Handling Unit)を用いる場合、冷房時には冷凍機で製造された冷水がAHUの冷却コイルへと送られ、そこで空気と熱交換を行い、温度が上がった冷水を再び冷凍機で冷却するということを繰り返しています(第3回)。空気温度が高い時には冷水の循環量を多く必要とする一方、空気の温度が目標値に近くなると、冷水の循環量は少なく済みます。
・定水量(CWV:Constant Water Volume)方式
定水量(CWV)方式は、冷水または温水の流量を変えず温度で制御を行う空調方式です。図2のように、冷却コイルへの循環量を調節するために一部の冷水をバイパスさせます。よって、三方向からの水の流れを制御することになり、三方弁方式とも呼ばれます。これにより、冷却コイルへの冷水量は減少する一方、バイパスさせる冷水の搬送エネルギーが無駄となり、省エネとはいえません。
図2:定水量(CWV)方式・変水量(VWV:Variable Water Volume)方式
変水量(VWV)方式は、建物の負荷変動に合わせて水量制御を行う空調方式です(図3)。変水量方式(VWV)では、……
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4. 自然エネルギーの活用
自然エネルギーは、脱炭素化を目指す社会の観点から注目され、世界が一丸となって温室効果ガスを排出しないことを目標に取り組んでいます。ここでは、地中を利用した地中熱源ヒートポンプ方式について説明します(図4)。
図4:地中熱源ヒートポンプ方式の例第4回で説明したヒートポンプを用いた個別空調方式では、冷房時に室内の熱を屋外機から外気に放出し、暖房時には外気の熱を屋外機で集めて室内に供給していました。この方式は空気を熱源とするため、空気熱源ヒートポンプ方式と呼ばれ、非常に多く採用されています。
しかし、空気熱源の場合は、……
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第8回:空調設備の汚染状況
前回は、空調設備と省エネルギーについて紹介しました。今回は、空調設備の汚染状況と、それに対する保守管理の重要性について説明します。
1. 空調機・ダクトにおける汚染
細菌感染症のレジオネラ症に代表されるように、空調設備に関連した健康被害のほとんどは、微生物由来のものです。微生物は、外気などの環境中から空調機を介して室内に侵入し、時には空調機自体が微生物の温床となることもあります。特に、空調機内の温湿度条件は微生物の増殖にとって好環境であるため、適切な管理を行わなければ微生物の汚染が顕著になってしまいます。ここでは、空調機内の各部位における注意点を説明します。
・フィルタ
フィルタは、空調機の空気入口部に設置されており、外気に含まれる侵入物をろ過することで、室内に取り込む粒子状汚染物質の低減を行います。比色法(フィルタの捕集効率試験方法のひとつ)で50%捕集率を有するフィルタであればほとんどの微生物粒子を除去でき、また、中性能フィルタは浮遊細菌と真菌に対して80%以上の捕集率を示すことが明らかにされています。空調機への微生物の侵入を防ぐためにも、適切なフィルタを選定することが重要です。
・冷却コイル
冷却コイルとは、管内を流れる低温の水や冷媒によって、管の外側の流体を冷却する熱交換部をいいます。室内からの還気と外気による混合空気は、フィルタを通過した後に冷却コイルへ到達します。冷却コイルでは、冷房と同時に除湿も行われるため、冷却コイル表面は空気中の水分が結露して高湿度環境となります。そのため、冷却コイルから吹き出し口までの間は相対湿度が高くなり、微生物の増殖に好環境となってしまいます。実際、多くの細菌と真菌が生息していることが分かっています。また、冷却コイルの容量が冷房負荷に対して大きすぎると、冷房コイルが頻繁に停止してしまい、混合空気が十分に除湿されないことがあります。このように、冷却コイルの適切な設計と管理は、良好な室内空気質を維持するためにも重要となります。
・ドレンパン(排水受け)
ドレンパンとはエアコンの内部にあるパーツで、内部の結露水を受け止める皿です。冷却コイル表面に付着した水分はドレンパンが受け、ドレン配管を経由して排水されます(冷房時に家庭用エアコンの室外機から水が流れ出ていることと同じです)。ドレンパンに溜(た)まった水の中でもバクテリアやカビなどの微生物の増殖が報告されているため、水が溜まらない構造にしたり定期的な清掃を行うことが必要となります。
・加湿器
空調設備に加湿器が搭載されている場合、暖房時においても、水を扱う加湿器では注意が必要となります。表1に、代表的な加湿方式における殺菌作用や、停止中の微生物増殖の有無を示します。近年では気化方式の採用例が多くなっており、加湿器内で増殖した微生物が原因となって加湿器病を引き起こすことがあるため、加湿器の状態も常に管理することが大切です。
表1:加湿方式ごとの殺菌作用・停止中の増殖の有無加湿方式 | 原理 | 殺菌作用 | 停止中の増殖 | |
蒸気吹き出し方式 | スプレーノズル式 | ボイラーからの蒸気をノズルにより加湿 | 有 | 無 |
電熱・電極式 | 電気ヒータ・電極により水を蒸気にして加湿 | 有 | 有 | |
水噴霧方式 | スプレーノズル式 | ポンプの加圧で水をノズルにより加湿 | 無 | 無 |
超音波式 | 超音波振動により水を霧化して加湿 | 無 | 有 | |
気化方式 | 滴下式 | 水の滴下で加湿材を濡らし、通風することで加湿 | 無 | 有 |
回転式 | 加湿材を回転させ、水槽で濡らし、通風することで加湿 | 無 | 有 |
・ダクト
ダクトとは、気体が通る管で、……
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2. 冷却塔における汚染とレジオネラ症
冷却塔は、冷却水を外気で冷やすことで、熱を大気中に放熱する設備です(第3回)。室内の熱を室外に放出(放熱)する役割をもっており、主に、ビルやショッピングモールなど大型施設の屋上に設置されています。冷却塔の冷却水は、冷凍機の凝縮器において冷媒から熱を奪うことで、夏期は25℃~35℃程度になって冷却塔に戻ってきます。冷却塔内は微生物の増殖に適した温湿度環境となるため、レジオネラ属菌を含めた微生物や藻類が繁殖しやすくなります。特にレジオネラ属菌は、肺に入ると「レジオネラ症」を引き起こすことがあります。そのため、これらが冷却水とともに大気中に飛散する可能性を考慮して、冷却塔を空調機の外気取り入れ口や窓などと10m以上離して計画するなどの対策が必要となります。
・レジオネラ症
レジオネラ症とは、……
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3. 空調設備の保守管理
2003年に建築物衛生法が改正されました。そこに規定されている建築物環境衛生管理基準において「空気調和設備を設置している場合は、病原体によって居室の内部の空気が汚染されることを防止するための措置を講ずること」が求められています。この法規に準じた、空気調和設備に関する衛生上必要な措置を、表2に示します。冷却塔や加湿装置など、水を扱う場所における措置が多くなっています。
表2:空気調和設備に関する衛生上必要な措置措置 |
1:冷却塔および加湿装置に供給する水は、水道法第4条に規定する水質基準に適合していること |
2:冷却塔および冷却水について、当該冷却塔の使用開始時および使用期間中の1か月以内ごとに1回、定期に、汚れの状況を点検し、必要に応じて清掃および換水などを行うこと |
3:加湿装置について、当該加湿装置の使用開始時および使用期間中の1か月以内ごとに1回、定期に、汚れの状況を点検し、必要に応じて清掃などを行うこと |
4:空気調和設備内に設けられた排水受けについて、当該排水受けの使用開始時および使用期間中の1か月以内ごとに1回、定期に、汚れおよび閉そくの状況を点検し、必要に応じて清掃などを行うこと |
5:冷却塔、冷却水の水管および加湿装置の清掃を、それぞれ1年以内ごとに1回、定期に、行うこと |
また、冷却塔の循環水は、……
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