NVIDIAとBMW、現実世界と仮想世界が融合された未来の自動車工場「デジタル ツイン」を実演

 NVIDIAは4月12日~16日(現地時間)の期間、技術発表会「GTC(GPU Technology Conference)2021」を開催し、同社CEOのジェンスン・フアン氏が講演で、現実と仮想現実、ロボティクスとAI(人工知能)を融合しながら運用しているBMWの自動車工場「デジタル ツイン」を紹介した。

 BMWには40種類以上のモデルがあり、車両ごとに100種類以上のオプションを選ぶことができるため、車両1台あたり2100通りもの組み合わせが存在する。そこでBMWの工場(デジタル ツイン)では、製造ラインあたり最大10種類の車種を生産可能にしたという。

BMWの自動車工場「デジタル ツイン」

 BMWが工場を設計または再構成する際はバーチャルと現実をリアルタイムでシミュレーションできるオープンプラットフォーム「NVIDIA Omniverse」を活用することで、Revit、CATIA、その他ポイント クラウドなど異なるソフトウェア パッケージを使用しながら共同作業を進め、工場の設計や配置を3Dで検討、すべての変更点はリアルタイムで可視化される。

NVIDIAとBMW、現実世界と仮想世界が融合された未来の自動車工場「デジタル ツイン」を実演

 特にBMWの工場では新車種の発売に対応するため、定期的に構成変更が発生し、こうした作業は現場で行なう必要がある場合もあるが、Omniverseのおかげで作業員は出張する必要がないという。BMW AGの役員を務めるミラン・ネデリコヴィッチ氏は「完璧なシミュレーションを行なうことができるので、BMWの計画プロセスに革命をもたらしました」と語っている。

Omniverseでのワークフローのシミュレーションでは、人間の作業員から取得したデータでデジタルヒューマンをトレーニングし、シミュレーション内の新しいワークフローのテストに投入して、作業員のエルゴノミクスや効率性を検討するという

 NVIDIAのフアン氏は「それこそまさにNVIDIAがシミュレーション用のデジタルヒューマンに力を入れている理由です。デジタルヒューマンのトレーニングには実際の作業員のデータが使われています」と述べるように、BMWの工場では作業員5万7000人がロボットと職場を共有しながら作業しているが、シミュレーション内の新しいワークフローのテストにデジタルヒューマンを投入することで、作業員の効率や安全性が向上しているという。

 ネデリコヴィッチ氏は「BMWの工場配置が変更された場合も、Omniverseがあることでロボットはすばやく適応できる。BMWではロジスティクスを担当するインテリジェントロボットを配置していて、製造工程の資材の流れを常に改善しているが、その基盤にあるのがNVIDIA Isaac ロボティクス プラットフォームであり、年間250万台を生産、その99%がカスタム製造というBMWにとって、この俊敏性は欠かせません」と語る。

 また、BMWの従業員が作業を監視している様子も紹介。作業員はOmniverse内でさまざまな仕事をさまざまなロボットに割り振り、工場全体に配置されたセンサーによって更新される進捗を現実のようなデジタル ツインで確認できるようになっている。時には人間がロボットを助けることもでき、ロボットのアラートを受け取ったら作業員がロボットを遠隔操作して、カメラで確認しながら5G接続を介してロボットを誘導して修正。ボタンを1回押せばロボットは再び作業に戻っていく。

Omniverse によって計画時間が短縮され、柔軟性と正確性が向上したことで、BMWの計画プロセスは30%効率化される見込みだという

 ネデリコヴィッチ氏は「NVIDIA Omniverse と NVIDIA AI により、BMWの製造ネットワークを構成する31の工場にシミュレーションを導入する道が開けました。また、作業員、ロボット、施設建物、組み立て用部品など、包括的な工場モデルに関わるすべての要素をシミュレートすることで、バーチャルファクトリー計画、自律型ロボット、予測保守、ビッグ データ分析など、AIを必要とするユース ケースに幅広く対応できるようになります。数々の新たなイノベーションを実現して、計画に費やす時間を短縮し柔軟性と正確性を高めることで、最終的には計画プロセスを30%効率化できると考えています」と述べている。