戦略と想いを伝える「デンソー ダイアログデー2021」レポート 「非デンソービジネスの開拓に挑む」と有馬社長
2020年度は大惨事の年、2021年は新しいスタートを切る年
デンソーは5月25日、将来のモビリティ社会の実現に貢献するため2017年10月に策定した「2030年に向けた長期方針」や、2020年12月に策定した「環境」「安心」分野での成長戦略の立案・実行と、環境変化に左右されない引き締まった強靭な企業体質への転換を同時に推進する変革プラン「Reborn(リボーン)21」などの達成に向けた事業の取り組みや進捗について、メディア、アナリスト・投資家を対象に説明する「デンソー ダイアログデー(DENSO Dialog Day)2021」をオンラインで開催した。
デンソー ダイアログデーは2019年に初開催され、今回が2回目。登壇したのは取締役社長 有馬浩二氏、経営役員 CCRO 篠原幸弘氏、経営役員 CTO 加藤良文氏、経営役員 CSwO 林新之助氏、経営役員 CFO,CRO 松井靖氏の5名で、「環境戦略」「安心戦略」「ソフトウェア戦略」「企業価値創造に向けた成長戦略」と4つのパートに分け、戦略とそこに込められた想いについての説明が行なわれた。
株式会社デンソー 取締役社長 有馬浩二氏冒頭で有馬社長は2020年度を振り返り「新型コロナ、自然災害など、まさに大惨事の年であった」と振り返ると同時に、取引先など関係各所のおかげて乗り越えられたと感謝を伝えた。また、「危機管理の重要性を痛感した年でもあった」と述べ、これらに関しては東日本大震災など過去の経験が活かされ、速やかな連携と迅速な初動対応ができたとした。そして今後は「危機は必ず訪れるという前提のもと、危機管理対応を最重要課題に位置付けて、対応への取り組みを強化していく」と語った。
また、2020年度の大きな出来事として、世の中の価値基準が大きく変化した年という点を挙げ、生活様式や働き方、コミュニケーションの方法などが変わったことで「仕事の価値」「人と接触することの価値」「移動の価値」などが大きく見直されるきっかけになったことを振り返った。
続けて「カーボンニュートラル」も、ビジネスや消費の価値基準を大きく変えたもう1つの要素として挙げ、今後は製品そのものが環境に優しいだけでなく、「生産」「運搬」「廃棄」までを含めた工程がクリーンであることがビジネスでの取引の前提となり「カーボンニュートラルが商品や企業を選ぶための新しい物差しになった」と言う。
これらのさまざまな変化により、デンソーも新しい存在価値が問われる時代に移り、これまでの主戦場であった「モビリティ領域」と得意分野の「モノづくり」から、新たに「非車載向け製品の開発」や「非デンソービジネスの開拓」に挑戦していくと紹介した。
そして、変革プラン「リボーン21」で掲げている「環境」「安心」への取り組みを中心にデンソーの体質強化と新たな土台作りを進めてきた2020年に対して、2021年は新しいスタートを切る年にするとし、これまでの「モビリティ」と「モノづくり」からさらに「ソサエティ」にまで分野を広げることを宣言。
また、環境対策である「CO2排出ゼロ」の実現については、国や地域によるエネルギー政策の違い、動力や燃料の違い、用途やサイズの違いなど、多様なニーズとソリューションに対応していく必要があり、選択肢を広げるための技術開発を加速させ、幅広い領域でカーボンニュートラルの実現に貢献していくとした。
さらに、安心への取り組みについては「交通事故ゼロ」にするための「普及」が重要で、新車だけでなく、現状の保有車、中古車の安全性能の向上に取り組んでいくと明言。これは日本だけでなく、世界の異なる交通事情や異なる交通インフラ事情にも対応できる選択肢を提示できるようにしていくという。また、世界の保有台数が14億台以上あることにも触れ、「保有車や中古車をカーボンニュートラル化することや、後付けの安全装置を普及させることのインパクトは計り知れないだろう」と語った。
最後に、モビリティ分野だけにとどまらず、ソサエティ領域では街作りや農業など「非デンソー」ビジネスによる新しい価値の創造に挑戦し、地域に根差したパートナーと連携しながら、デンソーの強みである「メカ」「エレクトロニクス」「ソフトウェア」の三位一体を活かした新しいソリューションを生み出していくとした。
これからは「まったく新しいやり方に果敢に挑戦しながら、環境と安心を通じて人と社会を幸せにするために、デンソーが貢献できることならカテゴリーは絞らないという姿勢で臨んでいく」と締めくくった。