空気清浄機は単機能であるべき――ブルーエア創業者に聞いた“ベストな空気清浄機”の条件:滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(1/2 ページ)
“Blueair”(ブルーエア)といえば、中国のPM2.5が話題になり始めた頃にいち早く“除去可能”と打ち出し、世界的にシェアを拡大したスウェーデンの空気清浄機専業メーカーだ。空気の浄化スピードを重視した質実剛健なモノ作りとスタイリッシュなデザインで市場の評価も高いが、2016年には食品や飲料、ホーム製品の大手サプライヤーであるUnilever(ユニリーバ)の傘下に入ったことでも注目を集めた。ブルーエアのモノ作りとその背景、今後の経営方針について、来日した同社CEOのベント・リトリ氏に聞いた。
ブルーエアのベント・リトリ社長。2017年2月に同社として初のポップアップストアを東京・表参道に期間限定でオープンしたブルーエア(現在は終了)。インタビューはその店内で行った子ども達にきれいな空気を
――まずはブルーエア設立の経緯を教えてください。もともと地元スウェーデンのグローバル企業であるElectrolux(エレクトロラックス)に在籍していたと聞いていますが、なぜ独立しようと考えたのですか?
リトリ氏:私は約10年間、エレクトロラックスに在籍していました。当時は夏休みによく子ども達を連れて郊外の森や島へ旅行していました。そこは驚くほど空気がきれいな場所でしたので、ストックホルムに戻るたびに“いかに都市の空気が汚れているか”を痛感していました。
子ども達にはきれいな空気の中で育ってほしい。そこで会社(エレクトロラックス)に「ベストな空気清浄機を作りたい」と相談したのですが、あまり興味を持ってもらえませんでした。それなら自分でやろうとブルーエアを設立したのです。
――エレクトロラックスでも空気清浄機を担当していたのですか?
リトリ氏:財務部門や品質管理部門、エアコン開発部門を経て、最後は空気清浄機の開発部門に在籍していました。
――しかし、思い通りの製品はできなかったということですか
リトリ氏:自分で言うのもなんですが、当時は若く、情熱もあったので、会社に「ちょっと待ってくれ」「少し落ち着いて」と言われても自分を止めることができませんでした。
――会社を作ってまで求めた“ベストな空気清浄機”とはどのような製品でしょう
リトリ氏:最初に考えたのはデザイン性です。当時、競合他社の製品はいずれも見た目が悪かったので、まずは見た目が良いものを作りたかったのです。
同時に品質面も大事です。クオリティーが高く、長く使えるもの。とくに「きれいな空気を素早く大量に供給できる空気清浄機ができないか」と目標にしてきました。さらには静音性や省エネ性も大事です。
医療機関などに置かれることも多い「Blueair Classic」シリーズ。2016年秋にリニューアルミニマルなデザインとポップなカラーリングが特徴の「Blueair Sence+」(ブルーエア センス プラス)――最初からベストなスタイルというのは頭の中にあって、そこに向けて全てを同時進行で開発したということですか
リトリ氏:そうですね。とくに「きれいな空気を素早く大量に」という目標から生まれたのが、「HEPA Silent」(ヘパ サイレント)テクノロジーです。最初は大学の教授であるエンジニアと組んで開発を進めました。
↓「HEPA Silent」(ヘパ サイレント)テクノロジーの概要。空気の取り入れ口に活性炭が練り込まれた脱臭シートと3層フィルターを備え、大きな粒子やにおいを除去。さらに内部のイオナイザーで微粒子をマイナス帯電させ、プラス帯電させたフィルターに吸着させて除去する。0.1μmレベルの超微粒子まで99.97%除去できるという
成功の理由とは?
――ブルーエアの売上が伸びていますが、ここまで伸びると予想していましたか?
リトリ氏:予想以上です。過去数年は倍々ペースで伸びている状況です。
成長ペースは予想以上というリトリ氏――理由はどう分析していますか?
リトリ氏:多くの人が「空気が汚い」という事を認識するようになり、特に先進国を中心に空気清浄機に対する認知が高まったことだと思います。大気汚染が深刻な中国で、50%の人が「空気清浄機を買うならブルーエア」と回答した調査結果もあります。
とはいえ、所有率は世界の人口の数%という段階なので、まだまだ“伸びしろ”はあります。そのうち、世界中で“一家に1台”空気清浄機があるような時代になると思いますし、その先にはアプリなどで空気の質が目で見えることも当たり前の時代がやってくると考えています。
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