フィリップスの電動ファン付き「ブリーズマスク」を使ってみた
フィリップスからハイテクマスクが発売されます。飛沫に花粉、PM2.5やウィルスを防ぐフィルターに加えて、なんと電動ファンを搭載。「ブリーズマスク」と名付けられた本機を試す機会を得たので、使い心地をレポートします。
フィルターを交換して繰り返し使える
ブリーズマスクは土台になるカバー部分に、充電して繰り返し使える電動ファンと、フィルターを装着して使います。フィルターは、飛沫・PM2.5・細菌・ウィルス・花粉・紫外線の保護性能があるとされている、N95規格をサポート。汚れてきたら交換することで、マスク本体は繰り返し使えます。
マスク本体と電動ファン、フィルター(1枚)がセットになった製品価格は10,780円(税込)。マスクとしてはかなり高価です。パッケージにはフィルターが1枚しか同梱されていないので、5枚入りで1,595円(税込)の別売フィルターもいずれ買い足す必要があります。カバーの色はブラックと薄いグレーの2色。当初はAmazonのフィリップス公式チャンネル、楽天市場のオンラインストアで販売し、順次販路を拡大していくそうです。
もともとは中国市場向けのPM2.5対策用マスクとして作られた
フィリップスがなぜマスクを作るのかと不思議に思うかもしれません。フィリップスはヨーロッパで最も人気が高い総合家電メーカーです。現在は日本で発売されていない空気清浄機も手がけており、その開発から得たノウハウが電動ファン付きのマスクに応用されています。
でも、そもそもコロナ禍の影響が及ぶ前には、ヨーロッパの人々にはマスクを着けて過ごす習慣がありませんでした。ブリーズマスクは、フィリップスが中国市場向けに企画・開発した商品なのだそうです。だからマスクのデザイン、装着感はアジア人の顔の形、鼻の高さに合わせて作られています。そういう背景もあり、ブリーズマスクは欧米で発売されていません。今後コロナ禍が長引くようなことがあれば、アジア発のグローバル商品として、フィリップスのラインナップに加わるかもしれません。
ブリーズマスクの使い方は?
ブリーズマスクのカバーは、見た目に厚手のファブリック生地のように見えるかもしれません。手に取ってよく見ると、目が粗く風通しの良いメッシュ状の生地が使われています。ユーザーが吸い込んだ空気がマスクの中に止まらないように、毎分約41リットルの空気をパワフルな日本製の電動ファンを回しながら排出します。
ファンの回転は3段階から選べます(オフを入れると全4段階)。本体のボタンを押して強度を切り換えるシンプルな方式としていて、操作にスマホは不要です。
フィリップスは、ブリーズマスクの電動ファンは基本的に屋外で使うものと説明しており、建物や公共交通機関の中、人と人が密になる場所ではオフにして使うように呼びかけています。もしユーザーが風邪を引いていたり、何らかのウィルスに感染したまま本機を使っていたとしても、周囲に空気を撒き散らさないように、電動ファンの排出ダクトは下向きに配置されています。ただ、風邪を人にうつさないためのマスクとして本機を使う場合は、終日ファンはオフにしたまま使うべきでしょう。
電動ファンのバッテリーは、パッケージに同梱されるmicroUSBケーブルで充電します。フル充電からの駆動時間は、ファンの回転強度にもよりますが、約2時間から3.5時間前後とされています。通勤の往復や、外を歩いて移動している時間だけ使うことを考えれば余裕があると思います。バッテリーのフル充電にかかるのは約3時間です。
以上、ブリーズマスクが誕生した経緯と基本的な使い方でした。続いて筆者が実機を使ってみたハンズオンレポートです。
ブリーズマスク、どうだった?
筆者がマスクを装着すると、雰囲気は写真(下図)のように。ちなみに、筆者は顔が小さいほうではありません。マスクカバーとフィルターの横幅は、筆者にはジャストフィット。耳にかけるヒモは長さが調節できます。
電動ファンとフィルターを装着した全体の重さは約60g。口元に少しマスクの重みを感じます。イスに座っているぶんには問題ないのですが、歩いたり自転車に乗ってしばらく身体を動かしたりしていると、マスクがズレてくることがあります。ベストなフィット感が得られるように、ヒモの長さはていねいに調節したほうが良さそうです。
中に装着するフィルターにはウレタン製の鼻当てがあります。鼻周辺の隙間がふさがれるため、呼気によってメガネが曇るのを防いでくれる効果も。電動ファンをオンにするとマスクの中に空気の循環が生まれるため、温かな呼気が少しだけ冷やされて排気される格好になります。この点もおそらく、メガネの曇り防止に一役買ってくれるでしょう。ただ、試用した日の東京は、夜間でもメガネが曇りにくい10度を下回らない穏やかな日が続いていたので、真価を把握できませんでした。冬本番になったらまた試してみたいと思います。
電動ファンはマスクの中の空気を外に出すためのものなので、電源をオンにして強度を変えてみても、マスクの中で空気が渦巻いて寒くなることはありませんでした。食事をして、歯を磨く前にマスクを装着しなければならない場面でも、自分の口臭が気にならないのもうれしいところです。
電動ファンが回るときのノイズも気になります。静かな室内で使うと、3段階の最弱レベルでも近くにいる人に音が伝わりました。屋外を歩きながら使っているぶんには、最強レベルでも周囲に迷惑をかけることはなかったと思っています。
ただ、ワイヤレスイヤホンを装着して音楽を聴きながら使ってみると、ブーンという低い音のファンノイズが音楽にかぶって聞こえてきます。いくつかのイヤホンで試してみましたが、結果は同じ。音楽や映画の音声を聞きたい場面は、ファンをオフにしたいところです。
ブリーズマスクの電動ファンユニット部分には防滴・防水性能がないため、汗をかくスポーツシーンや雨に濡れる屋外での使用は推奨されていません。カバーに付けた電動ファンは、口元側がフィルターで覆われるため、直接呼気や汗がかかる心配はないでしょう。
こうした構造を理解した上で注意しながら、ジムでジョギングをしながら使ってみましたが、身体を少し激しく動かすとやはりマスクが重みで口元から滑り落ちてきます。屋外に出て走りながら息が上がってくると、やはりマスクをしているぶん息は苦しくはなります。呼気によって口元が蒸れてくる感じもありました。汗で濡れたときのメンテナンスを考えると、ブリーズマスクはスポーツシーンには向きません。
繰り返し使うためにはメンテナンスの工夫が必要
ブリーズマスクは使い捨ての製品ではないため、長く活用するためのメンテナンスにも工夫を凝らしたいところです。
カバーはメッシュ状の乾きやすい素材なので、フィルターと電動ファンを外して水で洗い、ベランダに干しておけば朝までには乾いていました。数日使ってみた感触としては、毎日外から帰ってきたときアルコール成分を含む除菌シートで拭いても、カバーが痛むことはなさそうです。電動ファンの部分は水洗いできませんが、こちらも表面を除菌シートで拭くぶんには大丈夫でしょう。
気になるのはやはり中に装着するフィルターです。筆者はテストの間、帰宅後にフィルターを外してアルコール成分を含む除菌消臭スプレーをかけながら使っていました。数日後もボロボロになることはなかったのですが、やはり連日使っていると、口元側の不織布が細かく毛羽立ってきます。
下ろしたてと比べて装着感は落ちてくるので、数日ほど外出に使ったら新しいフィルターに交換するサイクルがよいと思います。交換用マスクフィルターが5枚入りで1,595円(税込)なので、どれほどの頻度で外出するかにもよりますが、1カ月に3~4パックの交換用フィルターが必要となると、コストパフォーマンス的には割高に感じます。筆者の場合ですと、日常は使い捨てマスクと本機を併用することになりそうです。
ブリーズマスクは、ファンをオンにするとボタンの周囲に白色LEDランプが点灯します。暗い場所で使うと少し目立ちますが、日中や明るい場所ならそれほど目立たず、周囲の視線を集めることもありませんでした。きっとブリーズマスクは「夏も涼しく使えるマスク」なので、暑いシーズンや花粉症が厳しい季節、どこまで効果を実感させてくれるのか楽しみです。
これからはハイテクマスクの時代?
現状はマスク本体がワンサイズなので、顔の小さな女性や子どもはちょうどいいフィット感が得られないかもしれません。初の製品で良い反響が得られれば、サイズやカラバリ、新しいデザインの展開にもつながりそうです。
2020年の秋には、LGエレクトロニクスが海外で「PURICARE」という製品を発表。これはマスクの形をしたウェアラブル空気清浄機です。強力なHEPAフィルターを搭載するほか、専用の充電ケースでチャージ中にはUVライトで本体を除菌してくれるというユニークな製品。スマホ連携機能も備えるなど、本格的なエレクトロニクスデバイスです。
今後は新型コロナウィルス感染症の影響に関わらず、世界中でマスクによる感染症予防対策の重要性が見直されるのではないでしょうか。大手家電メーカーから新鋭のスタートアップ企業まで、多くのハイテクマスクが製品化されて「スマートマスク」がひとつのカテゴリーとして育っていくのか注目です。