給気口からの冷気で部屋が寒い気がする……。これって閉めちゃダメなの?

部屋の中に取り付けられている「給気口」。部屋の換気のための設備であり、注意書きには「台風などの強風時以外は閉めてはいけない」とあるものの、「冬は隙間から入って来る冷気が寒い」「夏は冷房の効きが悪くなりそう」といった理由から、ずっと閉めているという人もいるかもしれません。

ですが本来、シックハウス症候群の対策のためにも部屋の換気は重要なはず。そこで今回は給気口の果たす役割や使用上の注意点について、住環境に関する環境や健康、シックハウスの相談を行っているNPO法人 日本住宅性能検査協会 理事の高尾和宏さんにお話をうかがいました。

――まず、給気口はどんな役割を果たしているのでしょうか。

「給気口は文字通り、外の空気を部屋の中に取り込むための穴です。空気を排出するための排気口とセットで、部屋の空気を入れ替えます。部屋の換気は、シックハウス症候群などの化学物質による疾病を防ぐという観点からもとても重要です」

――給気口は、常に開けたままにしておかなくてはいけないですか。

「はい。平成15年7月1日、シックハウスの原因となる化学物質の室内濃度を下げるため施行された『改正建築基準法』ではホルムアルデヒド対策の一環として、機械換気設備(24時間換気システムなど)の設置が義務付けられました。24時間換気システムのスイッチは切らずに、常に運転することが基本になります。給気口も塞いだりせず、常に開けておいてください」

――冬場は寒いから、という理由で閉めっぱなしという人もいるようです。

「住宅などの居室の場合、換気回数は1時間で0.5回以上と定められています。つまり、2時間かけて部屋の空気がすべて入れ替わるイメージですね。時間をかけて換気をするので、外気の流入で寒い思いをするということは少ないと思います」

――実際は、換気で部屋が寒くなる心配はほとんどないということでしょうか?

「そうです。もし、どうしても寒いと感じるのであれば部屋の設定温度を1〜2度程度上げたり、保温性の高い毛布を使用したり、何か別の方法を試していただきたいです。24時間換気は、あくまでも全部屋を浄化するということです。給気口を閉めてしまうと、その代わりに夜間も含め2時間おきに窓を開けなければならなくなります。その手間を省くことができるという点でも、給気口は有効に利用していただきたいですね」

――例えば、空気清浄機を回していれば給気口を閉めていても大丈夫、ということはありますか?

給気口からの冷気で部屋が寒い気がする……。これって閉めちゃダメなの?

「一般的に家庭用の空気清浄機は、花粉やハウスダストなどの粒子状の物体しかキャッチしません。シックハウスの原因となる化学物質はガス状のため、空気清浄機では除去できず、換気システムの代用にはなりません。部屋は、ただ人がいて座って呼吸をしているだけで汚れていきます。換気システムはコストをかけずに、簡単に空気を浄化できる設備です。空気清浄機は換気ではなく、あくまでもプラスアルファの補助的な性能だと思っていただいた方がいいでしょう」

――給気口など換気システムを使用する上での注意点を教えてください。

「機械換気のシステムには第1種から第3種まで、3種類あります。第1種機械換気システムは給気口と排気口の両方にファンが付いており、第2種は給気口に、第3種は排気口にそれぞれファンが付いています。一般家庭で多いのは第3種機械換気システムですが、いずれのシステムでも24時間スイッチを切らずにファンを回し続けることが原則です。なおかつ、給気口の前には物を置かず、家具などで空気の流れを妨げないようにします。また給気口・排気口にはフィルターも付いていますので、定期的にチェックして汚れたら取り換えるようにしましょう」

――フィルターは、どのくらいの頻度で取り換えればいいでしょう。

「環境によって異なるので一概には言えないのですが、例えばエアコンのフィルターを掃除するタイミングに合わせて給排気口を確認するようにすれば、定期チェックを忘れにくくなります。チェック時に汚れているようであれば、フィルター交換をします。近くに工場があるなど、外の空気の質に心配がある場合は、専門家の判断を仰いでフィルターをより高性能のものに取り換えることを考えてもいいかもしれません」

――では、換気システムが付いていない住宅の場合、どうしたらよいのでしょうか。

「ええ、いま申し上げた換気システムの利用は基本的に、平成15年以降の新築物件に限定されます。それ以前の給排気口のない家では、窓開け換気を推奨しています。その際は空気を流すために、窓は対角線など複数カ所を開けることが必要です。窓は大きく開ける必要はなく、少し開けておくだけで十分です」

――換気システムの利用で、実際にシックハウスの被害は軽減されるのでしょうか。

「はい。平成15年の法執行以降、シックハウスの新築物件に関わる事故はデータ的に有意に減少しています。新築物件に住んでいて体調が優れないという相談は、せっかくの換気システムを止めてしまっていたというケースが多いですね。添加物の少ない食べ物やおいしい水には労力や対価も払うのに、コストをかけずに安全な空気を得られるチャンスを逃してしまっている。なんとももったいないと思います」

やはり注意書きに書いてあることはきちんと守らなければなりませんね。閉めることはなくても掃除までは出来ていないという方、案外多いのではないでしょうか。今回の記事を参考に正しい使い方を心がけ、安全な住環境での生活を送ってくださいね。

<取材協力>

高尾和宏さんNPO法人 日本住宅性能検査協会 理事

※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。